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平成14年10月末日
北朝鮮の核と日本の非核三原則 (隊友会12月号 掲載)
 9月17日の平壌宣言では、核問題について「全ての国際的合意を遵守する」としながら、北鮮が核開発を進めていたことが明らかとなった。報道によると、既に8月17日に北鮮の核情報は米国からわが国に伝えられていたという。米国の情報を軽視し、わが国政府が拉致問題にのみ傾斜しかねないのを米国は懸念し、わが国に警告したといわれる。そのために日朝国交正常化交渉において、核問題が拉致問題と並ぶ重要議題となったとされている。安保問題に対する政府の認識の甘さが問題とされているが、これは政治家の問題もさりながら根本的には国民意識の問題であろう。
 わが国は唯一の被爆国であり、核に対するアレルギーは強い。それは当然で、世界における核廃絶は、わが国の正当な要望であり、世界にそれを強く発信しなければならない。しかしそのことと、わが国に向けられた核兵器の脅威にいかに対応するかは、少なくとも政府にとっては、別の問題である。矛盾した多くの問題にそれぞれ対応していかなければならないのは、国内、国外を問わず、政治の現実である。
 核に対しては抑止が言われてきた。抑止理論が何処まで妥当するかは分からないが、少なくとも米ソの間では、妥当してきたといえよう。わが国は、核兵器について「持たず、作らず、持ち込ませず」の非核三原則を採っている。これは、抑止理論に反する原則である。米国の抑止力に依存しているということであろうが、米国の核使用はあくまで米国の利益から判断されるのであって、わが国の依存がどこまで確実なのかは分からない。友好国、同盟国であろうと、国家はそれぞれ自国の利益のためだけに行動する。特に死活的利益が関わる問題では、それ以外はあり得ない。
 わが国の態度と比較されるのが、冷戦中のことであるが、NATOの二重決定である。1977年頃からソ連では、SS―20が配備され始めた。SS-20は、射程約4千キロの固形燃料の移動式ミサイルで、米国にはとどかないが、欧州諸国は射程範囲内である。NATOはSS-20に対しては、米国の抑止力は働かないのではないかと恐れた。SS-20の使用は、核使用は欧州だけですよと言っていることであり、それに対し本来米国本土を防衛するための核兵器を使用すれば、米国本土に対して核の反撃がなされるかもしれないからである。
 そこでNATOは二重決定を行い、SS-20とほぼ同射程の米国のパーシングK及びクルージング・ミサイルを配備することとし、ソ連がSS-20の配備を中止すれば、NATOもそれらのミサイルの配備を中止するとした。わが国にもSS-20は向けられていたが、わが国は無関心であった。
 来日した米国のケリー国務次官補は、「北朝鮮の核のターゲットは日本だ」と述べたといわれる。北朝鮮が核を開発していて、その危険が日本に及ぶということを米国から指摘されなければ気にならないというのは、大変な話だが、それが日本人一般の感覚であろう。それでよいのであろうか。ことに冷戦中は世界が二分され、固定化されていた。戦争が起こるとすれば世界戦争であろうから、わが国に対する危険は大きなものであったとしても、米国が戦争をしている状況の中にあり、自分で考えなくとも良かったかもしれない。しかし現在では、日本が直接侵略されていなくとも、紛争に巻き込まれる場合もあろう。危険に対してもう少し敏感となる必要があるのではないか。
 脅威とは、意図と能力であると言われてきた。私は間違っていると思う。脅威とは能力そのものだ。わが国に対し使用出来る能力は脅威である。どう対抗するかは、また別の問題だ。最も北鮮の核には、意図も能力もあるであろうが。北朝鮮の核は、米国との協力により撤廃させることが出来るかもしれない。しかし、日本に対する核の脅威は、ロシア、中国もある。それにどう対抗するか、全くの無関心で良い訳はあるまい。
 わが国が核武装することによる核抑止は論外だ。わが国が核武装するのは不可能である。非核三原則を見直すのか、或いはミサイル防衛は、技術と経費の面で可能なのか。真面目に取り組む必要があろう。蛇足だが、中国がわが国のミサイル防衛に文句をつけるのは、中国のミサイルが無力化されるのをおそれてのことであり、真面目にミサイル防衛が防衛的なものだと説明して納得を得ようとするのは馬鹿げている。
 抑止理論は通常兵器の分野でも機能する。しかし支配地域を持たないテロ集団には働かない。また、北朝鮮のような超独裁国家に対してどの程度働くかは疑問である。また、核抑止でも、文化大革命で2千万人もの自国民を殺して平気な中国に対してはどうなのか。
 いずれにせよ北朝鮮の核が問題とされはじめた現在、核防衛をどうするか政治の場でも考えなければならないのではないか。        
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