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■■■核廃絶は可能か 情緒的対応は危険だ ■■■
平成22年9月1日
 この8月の第65回原爆忌は、広島には初めて米大使が出席、米国に遠慮してこれまで出席の無かった英、仏等を初め過去最多の外国代表が出席するなど大変盛り上がった。
これは、オバマ米大統領が昨2009年4月のブラハ演説で「核なき世界」を提唱し、
10月にはノーベル平和賞を受賞するなど「核なき世界」への期待が高まっていることにもよるだろう。
 「核なき世界」は実現するのか。核軍縮・核不拡散は「核なき世界」への道なのか。私は疑問に思う。
そして核被害の悲惨が情緒的に強調され、そのこと自体は核被害国として当然だが、それが日本が悪かったとのギルティコンプレックスと結びついて日本が核問題に理性的に
対応することを妨げている。それは日本にとって極めて危険なことだ。
 昨年来、オバマ大統領の主導で核不拡散と核軍縮を目指す国際会議等が行われてきた。同年9月、国連安保理、首脳級会合が開かれ、核不拡散と核軍縮を目指す決議が採択された。今年は、4月、米国は核戦力体制の見直し(NPR)で核兵器の役割縮小を発表した。また、米ロ大統領は新戦略兵器削減条約(新START)に署名した。
(これは、SALTに続きソ連最後の時に調印された第一次STARTが年内に期限切れとなるので、それに代わるものだ。米上院は内容の検討が必要としており、上院での批准が確実かは分からない。)
続いてワシントンで「核安全サミット」が開かれ、核物質の管理強化をうたった共同声明が採択された。
5月、国連本部で開かれた核拡散防止条約(NTP)再検討会議は最終文書を採択した。ただ、これらの核の不拡散・核軍縮は、核廃絶とは全く別のものだ。
 現在核保有国は、どれだけの核弾頭を保有しているのか。核兵器は弾頭と弾頭威力及び運搬手段を考えなければならないが、保有量の比較として、弾頭数を見てみよう。
21年度防衛白書によると、弾頭数は、米:5,576発(この5月、米国は5,113発と公表、冷戦期1967年の31,255発からは84%減少したとし、特に中国の核の透明化を要請した。)、ロシア:3,909発、英:185発(米国に続き最大225発と公表)、仏:348発、
中国:176発 となっている。ストックホルム国際平和研究所によると、印度:60〜70発、パキスタン:60発、イスラエル(保有を公式には認めず):80発であり、北朝鮮は2回の核実験で6〜8発の保有の可能性があり、イランはウランの濃縮活動を続けており、1〜3年で核弾頭保有の可能性があるとされている。
 核の不拡散は、新たな核保有国の出現を阻み、現核保有国の絶対的優位を確立することだ。米ロ間の核削減は、オバマ大統領としては、核軍縮を2大国間で進めることにより核軍縮、核不拡散への弾みをつけることだとされているが、充分すぎる核保有をしている米ロ間では、相互の抑止力の合理化に過ぎない。しかも米国は、核実験全面禁止条約
(CTBT)を上院の反対で批准していない。そして、米国の進めるMD(ミサイル防衛)は、
ミサイル攻撃の効果を限定することとなり、また技術的困難から現在のところ実用化は米国に限られている。ロシアにとっては相互抑止の関係を損なうもので、ロシアの核ミサイルに対抗する米国の配備は認めることは出来ない。米国は、MD配備はイランに対するものだから東欧配備は中止するとしたり、中露は対象外とすると表明したりして新STARTに
こぎ着けた。
 英、仏の核保有は、ソ連に対する米国の核抑止を確実にするためだった。中国は米ロに対抗出来る数量の確保までは、核軍縮には従わないだろう。
 米ロの核軍縮の背景には、米国、西欧諸国とロシアとの間で緊張緩和を越えた
協力関係が進もうとしている新たな国際関係がある。米国、西欧諸国、ロシアにとっては、
イスラム過激主義は共通の脅威だ。反米アラブ国は、過激派に核兵器を提供する可能性もある。過激派による何らかの核兵器の所有は、抑止力の為の保有ではなく、
行使の為だ。同時多発テロの目標となった米国にとって、米国の強大な軍事力では対抗できない脅威だ。
 NTP(核拡散防止条約)は1970年に発効し、米、ロ、英、仏、中の5核保有国を核保有国と認め、核保有国は、核軍縮と核保有国が核兵器を移転しないことによる核不拡散を
定め、非核兵器国は、核兵器の製造、取得の禁止及び原子力平和利用の容認とそれに対するIAEAによる査察等の義務化等を定めたものだ。5核保有国と185非核兵器保有国が加盟している。  
 このようにNTP体制は、核保有国による核の独占とIAEAの査察で分かるように非保有国に対する支配を定めた一方的なものだ。査察によりその国で開発した技術は筒抜けとなる。しかし核拡散を防ぎ、また核軍縮が進められるなら、核装備の世界の現実からは、止むを得ないものだろう。
 しかしNTP体制発足後、非加盟国のインド、パキスタンは核実験を行い核保有国となり、米国は容認した。イスラエルも核保有国だが、公式には自らは保有を認めていない。北朝鮮はNTPに加盟したが脱退し、2度の核実験を行い、核保有を宣言した。イランはNTP加盟国だが核爆弾の原料となる濃縮ウランの生産を進めている。他方イスラエルは、イラクやシリアを原子炉建設中として爆撃したこともある。これらが示すように、NTP体制は
核不拡散に対して有効な対策を取り得ていない。
 他方、アジアや中東では原子力発電所建設が大量に計画されており、米国にとって(日本にとっても)大きな輸出機会だが、ウラン濃縮やプルトニウム抽出の再処理は、
核爆弾製造に直結する。
以上 2に続く

 虎ノ門戦略研究所理事長   関 肇

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