

■虎ノ門戦略研究所
TEL045−564−53311 |
|
 |
■■■外交と軍事■■■
|
平成22年2月27日
米国政府は1月29日末、台湾に武器の売却を決定した。日本も導入している
パトリオットPAC3地対空誘導弾114基、多用途ヘリUH60ブラックホーク60機、
対艦ミサイル・ハプーン12基、多機能情報伝達システムである。また台湾の
現用F−16A/B型を性能向上させる改良型F−16C/Dの供与は、米台間で検討中という。武器の供与は、中国の急速な軍事力増強により中台の軍事バランスが崩れることを恐れたためだ。例えば、台湾を目標とした中国の短距離ミサイルは、05年末に790発だったのが08年には1150発に増加し、現在では約1400発に達しているという。(防衛力整備は脅威に対応して行われるものだが、我が国は例外で、国内における予算規模の
割合から決められている。)
勿論中国は大反対で、米中軍事交流を中断する等と報復措置をとると言っている。
日本にとっては有り難い話だが、実際には中国は米国との交流を停止したいわけでは無く、予定されていた米空母の香港寄港も黙って認めている。
米国は、台湾が中国の一部であるとは認めていないが平和的統一には反対しないだろう。しかし中国が武力進攻すれば、武力により侵攻を阻止するとの姿勢を取っている。
その場合、第一に行動するのが、在日米空軍のF−15だ。しかし本格的に対抗できる
のは、第7艦隊の空母艦隊で、その到着までには、1週間が必要だ。それまでの間に
台湾が中国に征服されてしまえば、米国も手を出せなくなる。米国が台湾防衛を果たすと
いっても、台湾が1週間は中国に抵抗出来ることが必要なのだ。勿論台湾が独自に
中国の侵攻を阻止できればそれに勝ることはない。また台湾がそのような能力を持つ
ことが台湾の抑止力となる。(そして、米軍が出動する時に日本はどうするのか。日本も中国に対し米国に守って貰うつもりなら、米軍に協力して自衛隊が出動する以外はない。
それならば、米軍との間に台湾有事の際の相互の協力関係について、秘密裏に実務家
レベルでの詳細な打ち合わせが必要だ。しかしそんなものはない。また、秘密保護法の
無い日本では、相互に秘密裏の打ち合わせをすることなどできない。)
米国は、国際的約束を最も守らない国と言われた時代もあった。しかし第二次大戦後、
世界の超大国として自由主義諸国と安全保障条約を結び、その安全を保証してきた。
冷戦後は唯一の超大国としての地位を保っている。ブッシュ政権は自己の力を過信したと
いえるが、オバマ大統領も先般の一般教書で唯一の超大国としての立場を維持すると
言っている。米国は、台湾防衛という大きな約束を守らなければ、世界の信用を失うこと
になり、それは米国の利益を大きく損なうのだ。
オバマ大統領は、昨年のアジア初訪問で中国を訪問した際、「21世紀の前向きで協力的、包括的な米中関係」を構築するとの共同声明を発表した。またオバマ大統領は、
ワシントンで行われた「米中戦略・経済対話」で「米中関係が21世紀を形作る」と述べ、
中国を世界的課題への対処で共に主導的役割を担うパートナーと位置づけた。
これを見てマスコミは、G2時代と大きく取り上げた。そして今回の武器売却、更に
その後の中国としては容認できないホワイトハウスへのダライ・ラマの招待が続き、
米中対立が始まると言う人もいる。
しかし、米国の中国重視という基本態度は変わらない。また、中国は激しく批難しても、
米国との協調の基本態度は変わらない。
私がここで言いたいのは、まず、国家間の関係は一様ではないことだ。同盟国間でも
そうだし、ましてこれまで緊張関係のあった国の関係では一層そうだ。互いに違う多くの
立場を主張しないのではない。基本的協調関係が国の利益になると考えれば、そのことを
基本に置くが自国の利益は可能な限り追求するのだ。わが国のように、友好関係というと
何でもニコニコ仲良くであり、まず妥協しようというのではない。
次に、国際関係は何でも話し合いで解決されるというのではない。わが国では話し合いで解決されると主張されることが多い。その話し合いは、軍事力とは全く次元が違う問題だと考えられている。それで問題が全て解決するならよいが、そんなことはあり得ない。
世界の現実は、話し合いがまず先だろうが、話し合いで解決できなければ、軍事力の行使があり得ることが前提となっている。また、軍事力をちらつかせながら話し合いをする場合もある。軍事と外交は盾の両面なのだ。更に、相手の軍事力行使を止めさせたければ、抑止力として働くだけの軍事力を保有し、行使する意思のあることを相手に分からせることが必要だ。
軍事力は、話し合い即ち外交と違う次元のものと考えるのは、歴史や世界の現実に目を
覆っているだけのことだ。軍事と外交の違いは、軍事力が行使されれば、その結果は勝敗で決定的に定まってしまう。そし大きな犠牲がでる。交渉という意味では本質は同じで、
その点が違うだけだ。
台湾への武器の輸出は、何でも話し合いという考えが通用しないことを示している。
話し合いは、軍事力行使があり得ることも一つの前提として行われるのだ。また、
軍事的な準備をすることが、軍事力行使を抑止してもいるのだ。
台湾の例を挙げたが、フォークランド諸島(マルビナス諸島)は、アルゼンチンから
約500キロの大西洋上の島で、羊飼いぐらいしか居ない所だ。英国領となっているが、
アルゼンチンが所有権を主張して軍事占領した。英国の首相は鉄の女サッチャーで、
反撃することを決定した。海軍力と陸軍力の差(アルゼンチンは、チリとの対立で陸軍の
精鋭をチリとの国境に張り付けていたので、陸軍をフォークランドに多数送ることは
出来なかった)で英国が勝利し、現在も英国領だ。この周辺で石油が出ることになり、
アルゼンチンは自国の領土として英国の開発を阻止しようとしている。今後の展開は
分からないが、これも又、軍事力が国際関係で大きな意味を持つことを示す例となるかも
しれない。
この対極にあるのが、鳩山首相の友愛の海における日本の姿である。例えば、東シナ海の日中中間線上にあるガス田「樫」の開発だ。日中協議で日本は共同開発を求め、日中政府は平成20年の合意で、取り扱いを継続審議とした。しかし昨年中国は単独開発を進めていることが判明している。水上にヘリポートが作られ、コンテナを搭載した船が
行きき来している。掘削施設本体から伸びるアームの先からは炎が噴き出している。
日本政府が合意違反と抗議しても、中国は「樫」は中国の海域にあり、開発は中国固有の権利であり、合意とは無関係」として、日本政府の抗議に取り合わない。ガス田「白樺」も同じ状況だ。
そもそも協議中、日本が日本側で掘削を始めると言うと、中国は軍艦を派遣すると言って
脅かすことが度々あったという。尖閣列島は、明治政府が清国に清国領土でないことを確認した上で、無主物先占で日本領土に組み入れたものだ。その周辺で石油やガスの出ることが予想されると、中国は、突然一方的に自国領とする法律まで作ってしまった。いつ占領に占領に出るのか、中国の軍事力次第だろう。
何でも話し合いで解決できるという妄想は敗戦ボケだ。未だに続く敗戦ボケから回復し、
世界の現実に向き合わなければ、中国の進出に対して日本はどう対抗出来るのか。また、現政権は米国と対等の関係などと言っているが、その為には、敗戦ボケからの回復が第一歩だ。
また、政治家は軍事力を肯定すると選挙で負けると思っている。そうかもしれない。
しかし、そんな日本の状態を今まで放置してきたのは政治ではないか。
以上
虎ノ門戦略研究所理事長 関 肇
時評・書庫へ戻る |
| |
ウェブサイト利用規定(必ずお読み下さい)
Copyright Toranomon Strategic Think Tank.All Rights Reserved
|
|