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■■■民主党の対米政策■■■
平成21年11月10日
1 国際問題と国内問題 
民主党が政権を取り一カ月以上経った。国会が開かれ、来年度予算を決めなければならない今になっても、民主党は、マニフェストや選挙中の無責任な発言に縛られて、国内、国際政策共に混乱している。
 しかし自民党時代には、どのように批判があろうとも放置され、或いは考えもされなかった多くの問題に視点が当てられるようになった。政権交代に不安を持った者も、改めて期待するところもある。国内問題では、特別会計や無駄使い予算など時間をかけても解明してもらいたいところだ。また米軍との関係でも、これまで当然とされていたことで見直しが可能なものもあろう。
 だが、内政の混乱は、その為に犠牲があろうとも取返しは可能だ。しかし、国際問題は取返しが出来ない。 例えば、現在、日本にとって緊急の国際問題は、
中国との領土、領海に関する主権問題だ。その一つ、東シナ海の中間線での
ガス田「樫」は、日中間の協議で継続協議とされたが、合意に反して中国側の
作業は続けられている。鳩山首相は、胡錦涛主席に「友愛の海にしよう」と語ったが、胡錦涛主席は中国国民の意思を尊重すると返答した。友愛の海で中国の作業が続けば、中国の権益は既得のものとなってしまう。
 現在の日本にとって最大の国際関係は米国と中国だ。米国とは同盟関係だが、中国とは経済的には親密でも領土、領海問題では対立している。日本は自力で中国に対抗する力を持っていない。そして、米・中関係は進展している。
 日本と中国との領土、領海問題が緊迫した時に、米国が日本よりの立場に立つかどうかは、日本次第だ。同盟は、自国の利益の為に結んでいるのであって、
お友達関係ではない。
 鳩山首相は、2度ほど会っただけでオバマ大統領と親しい関係だというが、大統領は米国の利益の為に働くのであり、仮に親しくともその為に米国の利益に反することはしない。
 鳩山首相の発言は、抽象的理想を述べるが、具体的内容となるとはっきりしない。特に外交関係では後退のようにみえる。日米同盟は日本外交の基軸だと言い、日米同盟を重層的に深化させるというが、沖縄、アフガニスタンという現実の問題の前では、後退しているだけではないか。米国が不信感をもつだけで、日本の損失となる。
 オバマ来日がこの13日となった。オバマ大統領も新政権で、日本との関係を樹立する最初の会談だ。民主党政権は日米同盟を基軸と言っており、その意味では、自民党政権の対米関係を継承している。安全保障問題で日米関係を再構築するということは、民主党がどの方向に向かうかは別として、私も賛成だ。
しかし、国際関係は、国内問題とは違うのであり、自民党時代の対米関係でも、時期の差し迫った問題は、取りあえず継承することが必要なのではないか。
それが分からず、自民党との違いを強調するのは、国際関係を理解していないということではないか。
2 沖縄
 現在米国との関係で問題となっているのは、沖縄とアフニスタンだ。普天間飛行場の名護市への移転は、計画変更を自民党時代には認めようとしなかった米国は、滑走路の位置の多少の変更は受け入れるとした。名護市も県も移転を
受け入れることを表明した。ところが、民主党の迷走に、名護市は受け入れ撤回もあり得ると言い出し、知事も批判を始めた。これなど、鳩山首相は、選挙中の発言に拘泥し、アリバイ作りを行っているだけとしか考えられない。
 岡田外相は、嘉手納基地への統合を主張している。しかしこれは、海兵隊と空軍の使用航空機の違いなど運用面から、かねてから米国は不可能としていた。基地の所在する北谷町も騒音の増大は耐えられないと言っている。これなど、
過去の経緯を知れば、今更そんな主張は出来ない筈だ。
 自分で改めて情報を仕入れ、相手国と改めて話し合わなければならないというのは、子供の言い分だ。
 官僚主導を排するというのは必要だ。軍事については政治優先の原則が大切だが、官僚に対しても原則は同じだ。しかし、排するとして、情報や政策案について官僚を使わないというのは、人を使うことが出来ないというのということだ。
官僚に過去の経緯なども聞かずに、自分で聞いて回って決めようというのは、政治優先の原則についての無理解だ。軍事で政治優先として、情報も聞かず、部隊指揮も政治が行うというのは、政治優先とは意味が違う。官僚の協力が官僚主導
になるというのは、軍事の場合と同じく政治家の無能でしかない。
 そもそも移転は、普天間の住民の危険回避から平成8年橋本内閣の時に、
海兵隊の反対を押し切って米大統領が政治優先で日本の主張を受け入れたものだ。自民党政権が具体化を進めることが出来なかったのだ。岡田外相は、「沖縄の皆さんの思いを踏まえて行こうとしている」と言うが、これも選挙中の発言に対するアリバイ作り以外ではない。
3 アフガニスタン
 更に問題はアフガニスタンだ。日本の対米関係が決定的となる問題だろう。
米国にとっては、ベトナムの再来となるのではないかと懸念されているが、
今や米国だけの問題では無く、国際的問題なのだ。
 民主党は取り敢えず、インド洋での給油を止めることにした。給油は日本にとって危険の最も少ない協力だ。しかしこの協力は、一部の政府関係者しか知らない協力だった。また、鳩山首相は自衛隊の派遣はしないと述べた。そしてこの財政難の折に、50億ドルの資金援助をするという。NATO事務総長は、日本が派兵しないなら、資金拠出の拡大を望むと言っている。資金拠出は、支出項目は日本が決めても、受ける方では勝手に使える金が増えることだし、また現地で日本何をしているのか顔が見えない協力だ。
 日本のアフガニスタンに対するこのような消極的態度には、これは米国への協力に過ぎないので、国民の理解が得られないと首相が考えているのだろうか。
対米関係は、日本にとって重要と大多数の人が思っている。しかし日本には嫌米感情がある。
それは、今でも露骨な米国の内政干渉があるためでもあるが、基本的には、敗戦から独立を回復した時、吉田内閣が独立を心理的に国民に自覚させる努力を
しなかったからだ。一時言われた「戦後レジーム」からの回復がなされなかった為だ。
 政治は国民に迎合するだけではない。国民を教育することも大切な仕事だ。
日米同盟は基軸というなら、何故アフガニスタンへの協力が必要か、国民を説得しようとしないのか。
 アフガニスタンがタリバンに制圧され、核保有国パキスタンにその勢力が及ぶと、核がイスラムの過激派に渡る可能性もある。それをどう考えるのか。
また、パキスタンは現在印度とは友好関係を築く方向だが、タリバンの影響下に入れば、印度とはまた敵対関係になる。それはアジアの大きな不安定要因だ。
更に、インドは日本の友好国で、経済的に中国に対抗するためにも大切な国だ。アフガンの麻薬栽培も日本と無関係とは言えない。
 現在、国連アフガン支援団も危険にさらされており、国連重視の日本は、人ごととしていてよいのか。NATO事務総長は「国際テロや大量破壊兵器の拡散などの新たな脅威は現在も健在で、アフガンからの撤退は、治安が安定するまではあり
得ない」と述べている。
 原理主義的イスラムに対して、一神教的教義のない日本は、教義に賛否を言うことは出来ない。しかし、武力闘争の現実の中で、グローバルな貿易国家である日本が我関せずの立場でいることが出来ようか。我々は、自由貿易システム
の中に組み込まれている。その中で如何なる立場を取るかどうかは、日本がその中で受け入れられるかどうかにも関係する。
 それは、国連という場でも同じだ。日本は一国平和主義的立場を取ることは許されないのだ。
 一方中国は、タリバンの原理主義とは対立する立場だ。中国が悩まされている新疆ウイグル地区はイスラムで、タリバンは新疆ウイグル地区の独立を支援していた。中国がアフガニスタンで米国に軍事協力することはあり得ることだ。米・中軍協力の拡大がゲーツ米国防長官と中国の徐才厚・中央軍事委員会副主席との間で一致されたと報道されている。
 中国が米国に協力し、日本の協力が顔の見えない金だけとすると、日・米・中の関係はどうなるのだろうか。
 また、首脳会談では、日米同盟の再構築を協議すると合意される見通しと報道されている。米国は、同盟を背景に、アフガニスタンへの自衛隊派遣など強い支援を要求するのではないだろうか。
4 対等な関係とは何か。
 民主党は日米安保について「対等な関係」を主張している。対等な関係とは何だろうか。安全保障について日米関係を見ると、第一に、核について米国の核の傘の下にいる。第二に、日本は専守防衛の下、日本の安全は米国に依存している。例えば、日本は攻撃的兵器を保有できないので、日本が攻撃されても敵基地の攻撃できず、独自では敵の攻撃を止めさせることが出来ないのだ。第三に、
日本には大きな米軍基地があり、日本は米国内に基地を持っていない。
 このような状態で、対等とは何なのだろう。もっとも、今日米国に匹敵する軍事力を保有する国はない。また今日、自主防衛は不可能だ。従がって、対等とは、国力に応じて米国との間で責任分担を行うことだ。日本の場合、例えば太平洋の防衛で、ある海域の安全は日本が分担することだ。
 以上を別の言い方でみると、国家間において対等とは権利・義務が対等ということだが、形式的対等と実質的対等がある。そして実質的対等は、国力が異なる以上あり得ない。しかし形式的対等はある。それが主権国家間の対等ということだ。
 それは、実行できることが規模や量で異なっても、権利・義務としては、同じということだ。例えば同盟国が攻撃されれば、自国の能力に応じて同盟国を助けることだ。
 その為に日本で障害になっているのは、大まかに言って二つある。一つは集団的自衛権が行使出来ないことだ。集団的自衛権を保有するが行使できないとの内閣法制局の解釈は欺瞞だ。その解釈を変更しようとしなかった自民党には
大きな責任がある。
 もう一つは、専守防衛によって日本の軍事力の在り方が、大きく制約されていることだ。専守防衛は、最初の頃国会で答弁されていた政治的意思表示に留まるなら、憲法第9条と同じで問題はない。しかし、第一回防衛白書で、それを軍事的概念として日本を制約する軍事上の規範としたので、おかしくなった。これも自民党の大きな責任だ。
 この二点を改めないないと米国と対等の関係にはなり得ない。安易に対等、対等といっているが、民主党はそれを理解しているのだろうか。民主党には、日教組の幹部もいる。今後安全保障をどう考えて行くのかは分からない。
しかし防衛に関して自民党は日本を米国の保護国としたのだ。鳩山首相の集団的自衛権行使の否定も、「取りあえず」と報道されていた。米国との対等ということで今後期待ができるのだろうか。
以上
 虎ノ門戦略研究所理事長   関 肇

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