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■■■北朝鮮の指導者交代■■■
平成21年6月15日

 金正日の後継者として、三男 金正雲(26)が指名されたと報じられた。正日は、独裁者の父、金日成から後継者として指名されてから、日成が死ぬまで約20年があり、日成の指導の下で独裁者として育てられた。その間、権力闘争で苛烈な意思を示し、最後の頃には日成さえ正日をはばかるようになっていたという。
 正雲は、若く、それだけの教育を受けていないし、自ら人事を行って部下を知り、配置して来た経験が少ない。急な後継者としての発表は、正日の健康状態が不安定だからとも伝えられている。
 正日が死亡したら、権力継承はどうなるか、北は崩壊するのか。国民は困窮のどん底にあり、権力基盤である軍も、下級軍人は食糧さえ不足しているという。国民の声が権力を左右するのなら、既に権力は崩壊している筈のところだ。
 独裁国家で大切なことは、権力基盤が安定していることだが、それには、まず権力の正統性による精神的権威の確立が必要だ。カトリック教会や共産党は、教会や党に権威がある。北朝鮮の権力の正統性は、金日成が日本に対する武力独立闘争の中心であり、その武力闘争によって北が解放され、独立したという虚構の伝説だ。金日成個人に権威の中心があり、その確立に金日成は最大の努力を払った。そして共産主義とはいうものの金王朝を成立させた。
 北は、閉鎖社会の中の徹底した情報統制(貧困だから可能だといえるが)と反対者の粛清によって、金王朝の精神的権威を確立してきた。儒教は権力の正統性を重要視するが、北には、現代でも儒教的精神が生き残っているという。核施設で事故が起こった時、「主席のために!」と裸のまま放射能で汚染された槽に飛び込み、清掃作業をした労働者がいたという。
 権力闘争があるとすれば、まず正雲の兄弟の間だろう。正雲には、異母長男の正男、二歳年上の二男正哲がいる。正男は権力の列外のようだから、あるとすれば、正哲との権力闘争だ。兄弟の権力闘争は、本人達の意思で始まる場合もあるが、取り巻きの権力意思によって本人達が動かされる場合も多い。また取り巻きがなければ、権力闘争は出来ない。しかし、正雲、正哲共に若く、これまで、権力闘争するほどの力のある取り巻きを作る余裕があったろうか。しかも疑り深い正日が健在で目を光らせている。それは難しいのではなかったか。
 正日は忠実な者を正雲補佐として配置したようだし、また、彼等も彼らの存立が金王朝の権威基盤にあることをよく知っている。彼らが正日忠実なら、正雲と正哲との権力闘争は、さしあったっては、無い可能性が大きいのではないか。
 そうなら政権は安定するのか。国内にあれ程の無理を重ねながら正日政権が安定しているのは、正日が力というものを決定的に知っているからだ。米国は、正日が何をしようと武力で侵攻することは無いだろう。それなら、国内で餓死者が出ようと、原爆とミサイルの開発を続ける限り、米国は正日と交渉せざるを得ないと正日は読んでいる。その中で正日が必要とする要求がどれだけ得られるか。原爆とミサイルが無くなれば、要求が通り、また約束が守られる可能性も少なくなるのだ。
 しかし正雲はそこまで力の意味を知り、その意思を持ち続けられるだろうか。オバマ大統領は、就任以来、外交の基盤を協力姿勢による交渉としており、力による交渉を放棄したとフランスのサルコジ大統領などから非難されたりした。しかし今回北に対しては強硬な姿勢を取るようにみえる。その中で、困窮がますます深刻化すると、正雲は、多少は妥協姿勢を示すかもしれない。彼の補佐達もそのような助言をするかもしれない。 
 北が最も大きな金をせびり出せそうなのが日本だ。日本には核やミサイルの外に、一国の問題として拉致問題がある。日本は、拉致問題が解決すれば、核、ミサイル問題が残っても、人道援助の名目で援助に進む姿勢を示すかもしれない。
 拉致問題の解決には、拉致された人全員の安否の外に、首謀者の確定と処罰そして被害者に対する補償が必要だ。それは、拉致された人の安否が明らかになっても、続いて必ず起こる問題だ。それが明確にならないと日本としては、援助に踏み込めない。それが国民世論となって、日本政府も縛るだろう。
 首謀者は正日だ。首謀者を明らかにする過程で、それを明確にせざるを得なくなるのではないか。それは、正日に誤りがあったことを明らかにすることだ。正雲達も権力が当面安定していれば、援助の甘い誘惑に釣られて、神格化された正日の責任を明らかにしても問題は起こらないと考えるのではなかろうか。しかし、それは権力の基本的意味を知らない者の考えだ。
 そうなると、正日の無謬性が否定されることになり、金王朝自体の権威が失われる。それは、内部統制が崩れることであり、反乱などが起こる可能性が生ずる。そうなれば北の崩壊だ。崩壊は、中国、ロシア、韓国は恐れているが(時評北朝鮮のミサイル発射参照)、米国は崩壊に乗じて核とミサイルを実力で抑えることが出来れば、北がどうなろうと構わない。米国は、人道名目で多少の援助はするだろうが、言うがままになる日本に援助の基本は押しつける考えだろう。・・・・といった見方を、読者はどう思われますか。
                                      (以上)
虎ノ門戦略研究所理事長   関 肇

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