

■虎ノ門戦略研究所
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■■■テロ特措法・民主党の公党としての見識(1)■■■
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平成19年10月8日
1. 党として主張の一貫性はあるのか
民主党は小沢党首の主張によって、インド洋へ自衛艦派遣の根拠となるテロ対策特措法の延長に反対だ。民主党が参議院選での大勝で特措法延長を参院で否決するのは確実だから自民党は新しい法律の提出を図っているが、新法についても民主党の反対は変わらない。
テロ対策特措法が平成13年に成立した時、民主党の主張はどうだったのか。民主党は国会での事前承認を主張し、それが受け入れられなかったので法案に反対した。しかし派遣の国会承認には賛成した。前回延長の時の反対理由は情報の開示がないということだった。今回の反対は国連安保理の決議がないというものだ。小沢氏は参院選のマニフェストで反対を表明しているというが、それは間違いだ。マニフェストに書かれているのはイラクにおける武力行使反対で、アフガニスタン関係の活動についての言及はない。党首が参院選のマニフェストを間違えるのも理解しかねる。
小沢氏は自衛隊の海外派遣について極めて特異な考えを持っている。国連憲章7条は国連が独自の軍を動かすことを想定している。ここで想定する超国家的国連軍は俗にいう国連軍すなわち、(1)
安保理又は総会決議による国連軍で加盟国の軍隊またはその集合体か或いは、(2)
PKO(またはPKF)の一部をなす国連軍ではない。小沢氏は超国家的国連軍に自衛隊が参加することを主張していた。
国連を作るに当たって、第二次大戦の戦勝国の内特に米国は、超国家的国連軍の建設を考えた。そしてその準備として発足当時憲章に書かれた軍事参謀委員会創設を試みたが失敗した。国連が超国家的組織ではなく、また主権国家が主権の重要な一部である軍隊の指揮権を放棄することがありえない以上、超国家的国連軍の創設は夢物語に過ぎない。政治家が夢を持つことは大切だ。しかし、日本だけの主張では動かしようもない国際社会で、現在また将来も国連が現在の形である以上、実現しようもない超国家的国連軍に自衛隊が参加することを、小沢氏が日本の現実の政策として主張するのは政治家としてどういうものか。そしてこれまでの超国家的国連軍参加の考えからすると、安保理決議による給油活動への参加とはどのような関係があるのか。
民主党は自由党との合体で小沢氏の主張を受け入れたのか。そうであるとすれば国民にそれを説明する必要がある。党内でどのような議論があり、小沢氏が党首に選ばれた時にどうなったのか、安全保障政策は民主党としても重要な一つではないのか。
現在民主党の主張は自衛艦のインド洋派遣は安保理の明示の決議がなければ認められないというのだが、何でも安保理承認が錦の御旗というのは、国際社会と国連の実態の前では独りよがりの話だ。
民主党は小沢氏が党首になり、これまでのテロ対策特措法に対する見解や安全保障政策が変わったのか。そこに一貫性があるのか。別の党と合体しても民主党を名乗っている以上一貫性があるかないかの説明責任があろう。
小沢氏は米国のシーファー大使との会見で、「安保理の認めた国際治安部隊(ISAF)のようなものに参加したい。それは米国にとってもよいだろう」と述べたと伝えられている。「米国にとってよい」とは何を意味するのか。それは自衛隊の今以上の参加であり、武力行使を含むと考えられるが、小沢氏の発言はそこまで意味するのか。そうだとすれば、その根拠が安保理承認というのは、集団的自衛権の行使ができないとする考えからは大変な飛躍だ。
小沢党首の主張は自衛艦のインド洋派遣は国連決議に基づいておらず、米国一国の自衛権発動に対する支援であり、日本としては集団的自衛権の行使となるから反対というものだ。民主党は党の見解が党内で検討されないまま小沢党首が言っただけで変わってしまうのか。そうだとすれば民主的な政党と言えるのか。いくら参院選で大勝した功績者であるといって、党首が一言言えばそうなってしまうのは毛沢東当時の中国共産党と同じではないか。
2. 派遣にいたる経緯と国連等の決議
海上自衛艦のインド洋派遣は平成18年(2001年)9月11日、アル・カイーダが行った航空機による同時多発テロに始まる。このテロで破壊されたニューヨークの国際貿易センター・ビルにおける犠牲者を初めとして、死亡、行方不明者被害者は全部で60か国約3000人、日本人犠牲者は24人だ。
アル・カイーダの目標は米国だったが、対象は米国人だけでなく無差別テロだった。世界は震撼し、自分達の問題と受け止めた。米国には何でも反対の立場を取りたがるフランスでさえ、翌12日ルモンド紙が「我々は皆アメリカ人だ」という見出しを掲げたという。だからNATO主導の国際治安支援部隊には37か国が加わっているのだ。
日本人24人の犠牲者もいる。事故ではない。日本人がいてもテロリストは問題としないのだ。無差別テロには如何に同情すべき理由があろうとも、日本人が犠牲者になる以上、それを国家として許すことはできない。それが国民を守る国家の義務だ。そしてこれを他人ごとのように思う人は、日本人とはいえない。北鮮の拉致被害者について「北鮮との国交回復に比べれば、拉致被害者十数人など何でもない」と言ったという外務省高官と同じだ。
この件に対する国連決議をたどってみよう。安保理はテロの翌12日、米国の要請により安保理決議1368号を採択した。それは、「テロ活動によって引き起こされた国際の平和及び安全に対する脅威に対してあらゆる手段を用いて戦うことを決意・・・個別的または集団的自衛の固有の権利を認める。・・・すべての国に対して、緊急に共同して取り組むことを求める」というものだった。政府はこれがインド洋派遣の国連決議の根拠となるとしている。一方この決議はイラクがクウェートに侵攻した湾岸危機の時の決議「国連加盟国に対し、(武力行使を含む)必要なすべての手段を行使する権限を与える」としたものと比べて、誰があらゆる手段を用いるのかが曖昧なので米国の自衛権行使を認めただけとする解釈がある。小沢党首の見解はこれによっている。しかし米国一国の自衛権行使としても、それは安保理が認めたもので、米国が勝手に自衛権の行使に踏み切ったのではない。
これに続く国際社会の動きを辿ると、国連も国際社会もアフガンのテロ作戦は国際的な連携で行う決意がなされ、実行されている。EUは21日緊急首脳会議を開き、「EU加盟国は各国の手段に応じて、軍事的支援を含むテロ対策を講じる用意がある」との合意文書を発表した。またNATO、オーストリア、ニュージーランド、ANZUS、OASなどの国際組織・各国は、米国の要請があれば集団的自衛権を発動することを相次いで決めている。米国が10月7日自衛権に基づき英国と共にOEF(不朽の自由作戦)の第一歩であるアフガンへの空爆を始めたが、それにはロシアと中国の承認も得ている。更に国連は12月20日、安保理決議1386号を採択した。それは「カブールとその周辺に治安維持のため、国際治安部隊(ISAF)を編成する。ISAFに参加する加盟国は、任務遂行のため、すべての必要な措置をとることができる」とした。そして03年10月、その活動地域をアフガン全土に広げる決議も採択した。更に安保理は06年9月と今年3月に安保理決議、1707号と1746号を採択し、ISAFとOEFに参加している有志連合各国に対し、ISAFと共同してアフガン新国軍の育成を要請し、ISAFとOEF参加国を含む国際社会の全面的支援がアフガン政府には必要であること明記している。
ISAFには37か国が参加しているが、OEFには陸上作戦に20か国、海上作戦に8か国が参加している。問題となっている自衛艦のインド洋派遣において日本では集団的自衛権の行使が認められないとしているので、海上作戦の内、非戦闘地域内で海上阻止活動(MIO)に従事する各国の艦船に対する洋上補給(給油、パキスタンの艦艇には給水も含む)だけを行っている。(特措法ではその外、「捜索救助」と「被災民救援」が認められ、難民のためのテントや毛布をカラチ港まで輸送したことがあった。新法ではややこしくしないために、給油、給水に限ることとしている。)
OEFは米国の自衛権行使で始まったが、ISAFと共に安保理も認めた対テロ戦争といってよい。この双方の軍事作戦にはイラク戦争に反対したフランスとドイツも加わっている。
米国が初め自衛権行使としたのは、軍事行動の自由が妨げられるのを嫌ったからではなかろうか。いずれにせよ米主導の作戦は国連を始め世界各国が支持している。最初の安保理決議1368号の表現が曖昧であり、米国の作戦が自衛権行使で始められたとしても、その後の経緯を見ると安保理も各国も米国支援を認め、作戦に参加しているのが事実である。小沢党首のように1368号の頑なな解釈に捉われるのは国際社会の見方として、また政治家の解釈としてはどうだろうか。
小沢党首と民主党には別の魂胆があるのだ。
(つづく)
虎ノ門戦略研究所理事長 関 肇
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