

■虎ノ門戦略研究所
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■■■安倍首相の退任■■■
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平成19年9月18日
9月12日安倍首相の退任が突如発表された。驚き呆れた。国民皆そうだったろう。テロ特措法の延長に政治生命を賭けると宣言して戦の烽火を上げ、敵と対陣した途端、俺は指揮官の任にあらずと逃げ出したのだから。しかもAPECではブッシュら諸国首脳の前でテロ特措法の延長に進退を賭けると大見えを切った直後のことだ。我が国を代表する首相としてみっともないこと限りない。かつて占領軍のマッカーサー総司令官が「日本人の精神年齢は12歳だ」と言ったことがあった。私は歴史の浅い国の人間が何を言うか、教養のないやつだと怒ったことがあった。それを思い出し、少なくとも政治の世界ではそうなのかなと嫌な感じがした。
安倍氏は在任期間9カ月の間に教育基本法改正、憲法改正への道筋等多くの業績を上げたが、国会乗り切りは強行だった。これに対する戦後レジームに立つマスコミの安倍叩きは激しかった。参院選で大敗した理由は色々言われておりそれぞれ正しいのだろうが、争点となっている問題の説明姿勢が悪かった。それが大衆の目に、安倍総理のいうことは信頼できない、との印象を与え、民主党の無責任な主張に乗じられる結果となったのだ。安倍総理は空気が読めない「KY」と言われるそうだ。テレビの前では大衆政治家であることが求められる今日、大衆の空気を読めないことが資質として問題だったのかもしれない。
大臣任命で失敗もあったし、参院選後も領収書の問題などで叩かれた。領収書問題は良いことではないが民主党にもあるし、これまでの政治資金の取り扱いが日本全体で杜撰に過ぎたのだ。今後の問題として姿勢を正してもらいたいが、小さなことでこれでもかと叩かれ過ぎた。小沢氏の政治資金の不動産化問題も法的には不正でないそうだが、納得できるものではない。
安倍総理は外遊する頃から神経が持たなくなっていたのだろう。そもそも特措法が国際公約だからといって、政治生命を賭けるという発言が異常を感じさせた。正常な神経で出てくる発言ではない。国内政治勢力の逆転で国際公約が変わるというのはあり得ることだ。イラクでも国内の勢力関係で兵を引き上げた国もある。
安倍総理は戦後レジームからの脱却を目標とした。民主党小沢党首のテロ特措法反対理由は、タリバン攻撃は米国一国が行ったもので国連の同意がないというものだ。これは事実誤認に基づいているが、その主張は国連の実態を見ずに国連中心を主張する戦後レジーム的発想と、国民の反米感情への迎合とを混ぜ合わせたものに過ぎない。安倍総理は、戦後レジームからの脱却という基本姿勢に忠実であるべきで、そのために職を賭するというなら分かるが、テロ特措法は国際公約でもむしろ枝葉とみなすべきだった。
戦後レジームというと、現在検討中の集団的自衛権行使の事例研究などは特措法よりも優先すべき問題だ。特措法は米国その他の各国から再度の強い要請があれば今の民主党も同意せざるを得ない。民主党内部には小沢党首と正反対の人たちもいる。かつてのソ連よりの社会党とは違う。自衛艦による給油が一時中止することになれば日本の国際責任に対しする姿勢に各国の非難は高まるだろうが、再開すれば終わるだろう。集団的自衛権の問題は国際的圧力はなくとも日本の国際責任にとってより重要な問題で、これからの日本の安全と国際的地位に係る問題なのだ。
戦後レジームは靖国に代る無宗教の国立追悼施設を作るという考えもそうだ。日本の歴史に対する裏切りだが、古参の有政治家多数が賛成している。靖国問題は本来国際的問題となるのがおかしいことだが、政治問題化して中国の内政干渉を許している。その解決は基本姿勢のはっきりした政治家に期待しないと日本が一層誇りを失うことになろう。
さらには、北朝鮮問題にどう向き合うのか。前の報告でも書いたが、柔軟な対応など北に乗じられるだけだ。安部総理の政権放棄はこれら全てを投げ出したのだ。
安倍総理には、「KY」と言われてもしかたのない面もあり、また弱さを感じるところもあったが、期待していただけに落胆した。もっとも、元森総理のような人でもマスコミの叩きに屈して弱気になり政権を放棄した。総理の孤独は大きい。安部総理の場合は残念でしかたがない。
そして次の総理候補が二人に決まった。国際問題については、福田候補は戦後レジーム向きの人のようだ。一方麻生候補は安倍路線を一層強く推進しそうだが、派閥で麻生候補を推薦するところは麻生派以外にはない。麻生候補は個人的人気に頼っているという。麻生候補を嫌っている影響力ある人たちは皆戦後レジーム派だ。麻生候補に期待するがどうなるのか。
私的なことで恐縮だが、安倍首相の退任のニュースがあった日の夜は大分悪酔いした。酔っ払って考えていたら、そもそも戦後レジームとは自民党が引いてきた路線だと思い至った。自民党の内部で戦後レジームからの脱却というのは自己矛盾ではないか。だから長老達が脱却に反対するのは当然なのだ。戦後レジームの解消には自民党が崩壊し、民主党も解体し、政界再編に期待する以外ないのではないか。安部退陣で戦後レジームの解消が遅れるのは今日の国際情勢の下で日本にとって大きな損失だが、それが国民の選択なのかと悟ったとき、飲むのを切り上げた。
(以上)
虎ノ門戦略研究所理事長 関 肇
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