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■■■小池前防衛大臣の国家観■■■
平成19年8月30日

 小池前大臣のパーフォーマンスについては馬鹿げていて書く気はしないのだが、離任に当り、あまりに違和感のある発言があったので一言したい。小池氏のような感覚が当り前となっているとすれば、日本人は心の底から植民地人となってしまったのだ。
 小池氏は「国防についてはアイ・シャール・リターンという気持ちだ」と言ったと伝えられる。改めてやりたいという気持ちを表現するのはよい。しかし問題は「アイ・シャール・リターン」という言葉だ。米軍のダグラス・マッカーサーが日本軍に敗れ、フリッピンを撤退する時に使った有名な言葉だ。当時フィリッピンは米国の植民地で、マッカーサーは守備隊の指揮官だった。やがて日本軍は敗勢となり、フリッピンはマッカーサーの率いる米軍に奪回され、マッカーサーのこの言葉は現実のものとなり、有名になった。

 国防の基本は国家をどう考えるかにある。それは国家の歴史に対する思いである。日本が敗けたからといって日本を敗戦に導いた米軍の将軍の言葉を引用するとは、日本人の心があるのだろうか。更にマッカーサーは敗戦日本の占領軍最高司令官である。憲法、教育基本法を初め戦後レジームといわれるものの基本を作り、厳しい言論統制により日本人の心を変えた責任者だ。負けるということはそういうことだと思うし、独立後も日本が日本の心を取り戻そうとしなかったのは、日本人が悪いと思う。と言っても、私はマッカーサーを許す気にはなれない。一方戦後レジームを有り難いと思っている人もいる。しかしそんな人でも、日本人としての誇りがあるなら、このような引用はためらうのではなかろうか。
 この言葉に誇りを感じる人は米国人だけだろう。フィリピン人も国の独立に誇りを持つ人は、この言葉を喜んで使うとは思えない。日本軍が進駐したときフィリピンの独立を認めたが、戦争中でもあり形の上だけだった。日本の敗戦によりフィリピンは日本軍の軍政下から解放されたが、米国の植民地としての地位を回復したに過ぎない。フィリピンが独立宣言をするのは東南アジアに独立の嵐が吹き荒れるなか、1946年になってからである。

 私は現在の日本にとって日米同盟は大切と思っている。またグローバル化の中で日本がそれを否定するのではなく、如何に対応し、成功させることが大切だと思っている。だからと言って日本人が日本人としての心と誇りを失ってよいとは思わない。むしろそうなれば、日米同盟にもグローバル化にも、国家として適正な対応ができなくなると思う。小池氏のような意識の持ち主が多くなったら日本の未来はどうなるだろうか。

<蛇足> 歴史の話
 フィリピンは長くスペインの植民地として圧政下にあったが、1896年には武力による独立運動が始まっていた。一方、当時の米国は西部のへの進出が終わり、極東地域への通商拡大を求めるようになっていた。またスペインの植民地であって同じく独立気運の高まっていたキューバに対して米国は多額の投資を行っており、キューバに対する干渉論が高まっていた。1898年、米国の干渉に対してスペインは宣戦布告をし、米西戦争がおこったが米国はキューバと共にフィリピンを制圧し簡単に勝利した。講和会議ではフィリピンの米国領有が認められたが、フィリピンは米国との約束もあり1898年独立し共和国となる。しかし米国は口実を設けて8万の軍を送り、フィリピンは敗れて米国の植民地となった。その時の米軍司令官はアーサー・マッカーサーで、副官が息子で先のダグラス・マッカーサーである。

 フィリピン独立軍のリカルテ司令官は日本に援助を求め、日本陸軍の川上操六参謀長の密かな理解を得て陸軍造兵局から武器を払下げ、ドイツの商社に売るという形で処理することとなった。ところがフィリピンに運ぶにあたり、三井物産の布引丸という古い貨物船を買い入れ輸送したところ、上海の沖合で暴風に見舞われ、船齢25年の布引丸は船員、武器もろとも沈没してしまった。一日千秋の思いで待っていたフィリピンのリカルテ将軍は、これで独立運動の前途は極まったと思ったという話がある。
 その後捕らわれた将軍は脱獄し日本に亡命、日本軍のフィリピン制圧と共にフィリピンに渡った。日本軍が負け戦となると米軍に囚われたくない将軍は日本軍と共に逃避行を続け、途上亡くなった。フィリピン国に対する熱い思いをのこし、その遺骨は日本にあるということだ。                                                                    (以上)
虎ノ門戦略研究所理事長   関 肇

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