

■虎ノ門戦略研究所
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■■■北の核実験 米、中の態度■■■
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平成18年10月31日
10月9日北朝鮮は地下核実験を実施したと発表した。規模が小さいので成功したのか、或いは本当に核実験だったのか疑問はあるが、16日になって米国は規模は1キロトン以下の小規模の核実験だったと発表した。地下核実験は二回以上必要と言われ、再度の実験が懸念されている。
実験は核弾頭がミサイル搭載用の小型化のため必要なものだが、所要の成果は得られたのか、規模が小さく失敗だったとも言われている。ミサイルについてはこの前の試射で米国を目標としたテポドンは失敗だったが、日本を射程内におさめるノドンの連射には成功した。
北朝鮮が依存する中国の強い反対をおしてまで何故今の時期に核実験を強行するのか。かねてから望んでいる米国との二国間協議にこぎ着けたいためなのか。米国は北朝鮮の力による圧力には応じない。そんなことをすれば次の大統領選には誰だって負けるだろう。
経済がいよいよ荒廃し、金正日は行き詰まったのだろうか。独裁の維持は最低、独裁者の意思と独裁者を支える暴力機構の保持によっている。それが耐えられなくなるほどになったのか。偽ドル札、偽タバコ、麻薬や覚せい剤等の密売による金策も、米国のマカオを始めとする銀行の封鎖で(犯罪組織相手なら他の強行手段もあるが、国家が相手では武力行使以外はこのような手ぬるい対策しか講じられない)難しくなった。日本拉致被害者一部の帰国も、日本から金を引き出すためだったと言われるが、それも日本国民の正当な反発で、金正日の考えた幕引きは難しくなってしまった(彼は、間違った情報を与えた当時の日本外務官僚を怨んでいるのではないか)。
核兵器の保有は米国に対する唯一の威嚇手段だが、そこへ突き進もうとするのは最後のあがきなのだろう。北の核兵器の保有には、中国でさえ反対だ。中国は北朝鮮を属国のようなものと思っているが、属国が自分を脅かす能力を持つのは許したくない。それが力を基本とする国際社会の姿だ。国連では先のミサイル実験の時よりも強い制裁措置が敏速に決定された。
核拡散には全ての国が反対だが、国連の場で早く強い制裁措置が決定されたのは、その外にも理由がある。ヨーロッパ諸国は北朝鮮がどうなろうとどうでもよいのだ。石油を産出し、第一次大戦前から利権が錯綜の歴史を持つイラクやイランの場合と違うところだ。ロシアも本来米国に同調したいが、米国の人権外交で困っているので多少の反発はする。
問題は中国だが、中国は日本と米国との協力がなければこれからの発展は不可能だ。胡錦涛が成長より冨の平準化を目標として「和諧社会」を打ち出しているが、8%の成長がなければ、年々の雇用増大に対応できないといわれるし、GDPの大きな部分が外国の投資だ。しかも欧米資本は中国の将来を見限って引き上げ態勢にあるという。日本でも最初に中国に入った伊藤忠は撤退にかかっているそうだ。そのため日本との関係をどうしても良好に保たなければならないが、そのためにも米国との協調が不可欠だ。自国の生き残りと発展のためには、北朝鮮など見捨てても構わない。
米国が武力発動も含める制裁措置を主張するのに対し、中国が強硬に反対し、更に経済援助を続けるというのは決して人道的配慮とか歴史的経緯によるのではない。何よりも金正日体制の崩壊を恐れるからだ。金正日が倒れれば、その後の権力を掌握できるような人物はいないと言われる。すでに粛清されたからだ。武力発動は直に金体制の崩壊とそれに続く国家の崩壊だ。そして膨大な難民の発生だ。中国も韓国もそれを恐れている。可能ならば、金より言うことを聞く独裁者が北を統治し、北の経済を少しずつ向上させたいが、金の権威を継承できる人物はいないだろう。中国による北の併合をいう米国人もいるが、今でさえ貧困地域の存在に苦しんでいる中国が、一層貧しい北朝鮮の併合を考える筈がない。一方、米国は金体制が崩壊し難民が流出しても何の懸念もない。むしろ望むところかもしれない。
数年前から中国は朝鮮との国境に一万人の正規軍を配置した。そして今、国境に鉄条網の策を張り巡らしている。中国は金体制がいよいよ崩壊直前まで行っていると見ているのではないか。武力行使は直ちに崩壊を意味する。国連決議における米国と中国の対立はそこにあり、日本は蚊帳の外だったろうが、両国の間で深刻な協議が行なわれ、米国は中国に同意したのではないか。テポドン2の試射は失敗したし、今回の核実験も失敗したのなら、米国まで到達する北の核ミサイル保有は先の話になる。そこで中国に妥協し、しかし北に対する説得と特に核技術の流出入、核拡散阻止の実力による協力を中国に約束させたのではないか。
日本にとってはどうか。難民の流入は日本にとって大きな問題ではない。船による脱出者がどの程度でるかだが、百万を越えるだろうと言われる中国への難民とは問題がちがう。日本には難民を何処に収容するか、などの検討もないから、色々混乱と被害は生ずるだろうが、日本にとってはコントロール可能だろう。日本だけの問題である拉致問題の解決には現在拉致されている人達の救出と同時に責任者の処罰が必要だが、それには金体制の崩壊は好ましいことだ。
崩壊前のもう一つの問題は、金が自棄になって韓国や日本を攻撃することだ。それも米国が反撃するだろうから、直ちに金体制の崩壊を意味する。フセインが攻撃された時、40日間ほど、金は身を隠した。そのような金が自ら攻撃をしかけるだろうか(或いは暗殺の危険もある亡命をするだろうか)。
ともかく、韓国に対する北の軍事能力の実態は低いと思う。航空部隊、戦車部隊は旧式でかつ戦闘には使えないほど老朽化しているのではなかろうか。戦闘力の維持がされているほど経済力の余裕が
あるとは思えない。砲が老朽化してなくとも弾薬は劣化しているのではないか。金正日は少ない軍事費用をミサイルと核に集中しているのだ。独裁者だからできることだが、その決断はたいしたものというべきだ。その外、10万といわれる特殊工作部隊がある。この部隊にはそれほど金はかからないだろうから、現在も力は維持されているだろう。
日本にとってはノドンの発射と特殊工作部隊の派遣が危険となる。ノドンは発射されなければ分からないし、特殊工作部隊は隠密行動をとる。日本は被害を受けなければ防衛行動の発令はしないだろうから、国民はじっと待っているよりしょうがない。更に日本には反撃能力もない。米国の反撃を待つだけだが、それで金体制は崩壊する。米国が反撃しないと、日米、米韓の安保条約の信頼性が問われ、世界的に米国のコミットメントの信頼性が失われる。米国にとってはこの方が大きな損失になる。
日本は被害を受けるが、それは継続的ではないし、日本国家が崩壊することはない。被害はこれまで日本の安全を放置してきた罰と考えるより仕方がない。ミサイルは一過性だし、特殊工作部隊の戦闘継続はそもそも日本国内では難しいし、金体制が崩壊した後は続かないないだろう。
日本の問題は、脅威が現実化している今でさえ、自衛隊の出動は日本が実際に攻撃されなければ出動できないとか、周辺事態対処では米国の支援ができるのかとか、できても米国と同じ行動をする例えば、豪州の軍艦の支援はできない、といった議論が自民党のなかにさえあることだ。法の合理的解釈は色々できる。それを危険が目前にあるのに、一国平和主義的発想から抜け出せないのは、頭脳がそのように固まっているからだ。1453年、東ローマ帝国の首都イスタンブールが異教徒のイスラム軍に包囲攻撃され、東ローマ帝国は滅びた。皇帝は陥落の際行方不明となる程の混乱だった。この時陥落の直前まで、イスタンブールでは、天使は男性か女性か中性かということが真剣に論じられていたという話があり、つくづく人間は心理的存在だと思ったことがある。麻原彰晃風の洗脳にいまだに罹っている人もいる。戦後占領軍のマインドコントロールに罹っている人が多いのも止むを得ないのか。日本の安全にはマインドコントロールからの解放がなければならないが、それには20代以下の世代に待つ外ないのだろうか。
北が崩壊したら建て直しにどのぐらいの経費が必要なのか。北のGDPは韓国の5%という説もある。韓国との統一コストについて、外国では色々の試算があるようだが、10兆円以上との試算もある。さらにコストだけでなく、社会主義化された頭脳を持つ人々が自由競争の中で発展していくには色々の困難があろう。そうなったとき日本が経費をどれだけ負担させられるのだろうか。米国も中国、韓国も日本に拠出を要求するだろう。国内でもその主張が強まるだろう。朝鮮半島とは日本は戦争をしてないし、負けてもいない。旧植民地に賠償を払った例は世界にない。香港返還でも英国は賠償金を払ってはいない。
わが国は半島とは特別な歴史的関係がある。また半島に特別な思いを持ってわが国で生活する人達の数も多い。人道援助は必要だが、賠償のような名目で税金を使ってはならない。国際関係において名目は大切だ。それが今後の外交関係も規定していく。屈辱的で事実に反する名目は絶対に使ってはならない。しかも統一された朝鮮半島は、ノムヒョン現韓国大統領からみても、反日的でかつ中国の衛星国となっていく可能性は大きい。そこに経済協力をするのだから、それをどう考えるのか直ぐにでも検討すべきだろう。
(以上)
虎ノ門戦略研究所理事長 関 肇
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