

■虎ノ門戦略研究所
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■■■北朝鮮のミサイルの脅威と国際関係■■■
(その4)
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平成18年8月2日
6. 各国及び特に中国との関係
北の核及びミサイルの開発を各国はどう考えているか。世界各国は自国の保有は別として、核拡散には不安定要因の拡大として反対だが、北の保有に対しては濃淡があろう。日米は絶対反対だ。中露も北が核保有により手の出せない国になることは好ましくないだろうが、わが国や米国ほどではないだろう。中国などは北の子分が米国に圧力をかけ得る立場になることを一面有意義と考えているかもしれない。西欧やその他の国はあまり深刻ではないだろう。 政治的には北は多くの国にとって経済的にも関係ない、どうでも良い国だ。西欧諸国にとっては、イラクやイランのように石油資源があり、歴史的経緯のある国に対する場合とは異なる。アジア、アフリカ、中東、南米の諸国にとっても、北からミサイルの輸入を求める国々以外には、北はあってもなくともよい国だ。だから国連でも米国の意向に同意しやすい。
中国が最後には北から見ると裏切ったような形で、7章を除いて日本案に歩み寄ったのは、これも米国との関係だろう。現在の中国、ロシアとも、基本的に米国との関係を重視しなければ両国の発展は望めない。現在ロシアは、石油価格の高騰で経済が一息ついているが、米国との関係は基本的に重要だ。サミットがロシアで開かれたが、サミットはお祭りのようなものであっても、ロシアも中国もサミットから除外されることには耐えられない。
金正日の父金日成は、ソ連が育て朝鮮に派遣した人物であり、旧ソ連圏内の国だった。今でも多少の影響力はあるだろう。全く見捨てることはできないだろうが、現在はそれほど北との関係を重要視してはいないだろう。
問題は中国だ。現中国政府は、清帝国の影響下にあった国々は中国に属していたかのような主張をしつつ、支配の範囲を広げている。漢民族の中国自体は満州族の清帝国の植民地だった。満州は清帝国の直轄地であり、チベットは清の皇帝がチベット仏教の最高施主であり自治が認められていた。モンゴルでは清皇帝がハーンであり、新疆ウイグル地区では皇帝がイスラム教徒の保護者だったなど、清の皇帝は5つの民族とそれぞれの関係を持ち、5つの顔をもっていた。しかし、現中国は歴史を知らず、それが全て漢民族の支配下にあったような顔をしている。
歴史的に朝鮮半島は支那大陸を支配した帝国の支配下にあり続けた。日本の併合前は満州族の清帝国の属国だった。朝鮮半島は35年間日本に併合されていたが、それは考えられていない。孔健氏(孔子の75代で、最近「日本との戦争は避けられない」を書いた。中国共産党のしかるべき地位にある人らしい)によると、現中国人は長く半島の宗主国だったから、今でも朝鮮半島との関係を唇と歯の関係で唇歯相依としている。唇(朝鮮半島)は、口の実質的役割を果たしている歯(支那)の従属的関係にあるが、唇が侵されそうになったら歯は守るために兵を送らなければならない。それが秀吉の朝鮮出兵時の明の出兵であり、日清戦争も朝鮮が救いを求めたからであり、朝鮮戦争において出兵したのもそれだからだと言っている(「中国人」)。半島の人も中国に対しては親愛の感情を持っているように見える。
こういったことは国家の関係では案外重要かもしれない。ともかく現時点では現中国が恐れているのは、金正日政権の崩壊であろう。崩壊により、膨大な難民が中国に押し寄せるからだ。中国の朝鮮寄り
には朝鮮族の地域があり、又中朝国境には自然障害がない。数年前だったが、中国は1万名の正規軍を国境付近に配備したとの報道があった。これは、押し寄せる難民に対するものではなかろうか。撃ち殺しても追い返すのではないだろうが、少なくとも難民をコントロールしなければならないからだ(日本に押し寄せることは殆んどないだろう)。
中国は日本海に対する出口がないが、北の港湾を租借したとの報道もある。また資源確保に狂奔する中国は、北の鉱物資源獲得のため北の鉱山を利用し始めたとの報道もあった。施設が大変老朽化しているというが、日本統治時代の施設だろう。このような関係は中国にとって北がお荷物だけではないことを意味している。
しかし、中国でさえ金正日のコントロールが難しくなっているようであるし、米国の金融締め付けは効果を発している。今回の日本の措置で更に苦しくなるだろう。暴発もあり得ると見て日本も対策を取る必要があろう。
8. 日本はどうすべきか
今回のミサイル発射は前回ノドンの発射の時に比べると、国内での話題が現実的となってきた。防衛が米国に頼らざるを得ないことも認識されてきたし、敵基地攻撃の議論も出た。金日正の政権が立ち行かないなら北朝鮮の主体性論はなくなることになるし、北が暴発する危険は少なくない。さらに尖閣列島は中国領土だと一方的に国内法に記載する中国は、日本を攻撃できる海空軍事力を増大させている。日本は空想的平和主義から脱却し、軍事問題についてまともな議論と政策を採用しなければならない時になっている。
まず専守防衛を政治概念に変更すべきことは先に述べた。次に防衛計画の大綱における考え方の修正である。防衛計画の大綱は、脅威を見積もって防衛力を整備する考えではない。地域に軍事的空白が生ずることで地域が不安定化するのを防ぐための「基盤的防衛力」を整備するというのだ。
不安定化を防ぐということは、地域の現状を変更する為に軍事力が行使されることを防ぐことだ。そのためには軍事力が行使されても目的が達せられないことが必要で、それには軍事が行使されても撃破
できる防衛力が必要だ。だから脅威に対抗できる防衛力がなければならず、脅威対抗型の防衛力でなければならない。基盤的防衛力の考えは軍事的に成り立つものではない。防衛力の規模は、脅威によってしか計量しえないし、正当化できない。昭和55年に始めて作られた防衛計画の大綱は、当時の防衛力の規模を固定化したもので、自衛隊反対の野党勢力に対する妥協でしかなかった。
今必要なのはこの考えを訂正し、現在日本にとって必要な防衛力を算定し整備することだ。これを阻むものは、空想的平和主義からの非現実的反対や日本人に植え込まれた専守防衛にしがみつく心のほか、財政上の反対だろう。現在財政当局の最大の問題は数年間で財政収支の均衡を図ろうとするものだ。そのために予算の削減が毎年行われており、米軍再編に関する日本側の支出に対しても防衛力整備計画の削減が求められている。こんな時に防衛費が増大する計画は今の日本で採用されるだろうか。
また前のメルマガで述べたように、米軍と自衛隊の協力は、日本の直接の防衛以外は広い規模で米軍の補給等後方支援をしようというもので、共に戦うものではない。少なくとも日本も米軍と共に血を流すというのでなければ、米軍による日本防衛もおざなりのものでしかなかろう。
今回のミサイル発射の情報は米軍によるものが中心だった。わが国も偵察衛星は運用しているもののその能力は低い。それは運用上のノウハウ、例えば、ミサイル確認のために不要な情報を写真の中から除外する方法などが不十分だからだ。この現状の差は縮まらないだろう。その情報を何時、どれだけ米軍がくれるかは日米関係に依存する。そして日本が米軍の最新の兵器を導入できても、その運用の決定的部分は米軍が渡さないだろう。これは英軍等に対しても同様で、これが同盟関係においても世界の現実だ。甘いことを言っても始まらないことを認識すべきだ。だからといて、武装中立といった話は馬鹿げていて話にならない。
このような問題に対して政府がどう取り組むか。思想の転換であり、新しい発想は官僚に依存しては始まらない。次の首相に負うところが大きい。
北に対する経済的制裁で、舞鶴漁港の業者や組合の人にテレビがインタビューしていた。ズワイ蟹の入荷が減少して困りませんかとの質問に、両者共「困ります。しかし北に対する制裁は国として必要と思います。我慢します」と答えていたのを見て感激した。財界の代表である人達が中国に媚を売り、首相の靖国参拝に反対し、団体で反対の決議をしている。これら財界の中心人物は自分たちの商売のために平然と国を売っているのではないか。これに対し日本の庶民が健全であることに、些か安心した。
(以上)
虎ノ門戦略研究所理事長 関 肇
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