

■虎ノ門戦略研究所
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■■■安保条約を改定しよう■■■
(その2)
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平成18年5月26日
2. 米国の戦略
米国との軍拡競争でソ連は崩壊した。冷戦後の米国は冷戦終結時のままの編成、装備、戦略、戦術では将来の不確定な脅威には適切に対処できないとして、RMA(Revolution
in Military Affairs:軍事における革命)の考えの下に新たな編成装備、戦略を検討してきた。
2001年9月11日の米国同時多発テロ以降、テロが現実に大きな脅威になって、テロに対する対応も必要となった。そのため、技術の進歩に応じた新たな兵器システム、作戦のコンセプト、部隊の編成等を開発し、それを総合化することが必要だとして「国防の変革」すなわちトランスフォーメイションを進めた。
国防長官が4年毎に行なう国防計画の見直し(QDR: Quadrennial Defense Review)の今年発表された2006年版では戦力構成について、(1)本土防衛、(2)テロとの戦い・非正規型、(3)通常作戦、を対象にすることとした。主要戦力構成として陸軍のモジュール化を中心とする統合陸上戦力、特殊部隊、航空戦力の無人化を含む統合航空戦力、海上戦力の即応態勢強化のための統合海上戦力、抑止力(核)、機動力・戦力投射能力の強化のための統合機動力などが示された。
QDR2001年版では既に戦力構成アプローチを「脅威ベース」から「能力ベース」に転換していたが、2006版では、2001版の「不安定の弧」や「4つの地域」といった特定の地域に焦点を当ることはせず、如何なる地域においても4つの課題(伝統型、非正規型、壊滅型、混乱型)のいずれにも対応できるバランスのとれた能力へとシフトすることが強調されている。さらに、米国は長く続く戦争の下にあるとし、この
トランスフォーメイションは、ある目的を達成すれば終了するのではなく、いつまでも続くものとしている。
今回のトランスフォーメイションは国防戦略のパラダイム・シフトといえるが、ここに米国の柔軟性を見ることができる。大東亜戦争では日本が初めに海上戦闘に置ける航空機の優位性を証明したが、最後まで戦艦を中心とする大艦巨砲主義から抜けられなかった。一方、米国はそれを知ると直ちに空母を中心とする海上戦闘のコンセプトに移行した。同じ柔軟性が今回も発揮されている。
他方、イラクの正規戦終了後の対テロ戦では困難を強いられ、非難も浴びているが、ラムズフェルドが大統領の支持を背景に反対を押し切ってでもトランスフォーメイションを強行するリーダーシップは強烈だ。これも文化の差だが、日本の場合だと例え強力なリーダーがいたとしても、ここまで思いきった改革は出来ないかもしれない。意思決定がボトム・アップでなされるから、各職種(兵科)における調整や抵抗が大変で、軍隊においても思いきった変革は困難だと思う。
戦力構成アプローチについてはどうか。「脅威ベース」は地域をある程度特定するから、その地域に限定して戦力配備をしておけばよい。しかし、「能力ベース」は地域を特定しないのだから、地球上のどの地域へも戦力の投入が可能な能力を持つことを意味する。しかも、米国の兵員数は削減するのだから、技術進歩と経済力の大変な力がなければ不可能だ。世界的な米軍の再配備も必要になる。在日米軍基地の再編〔米本土の陸軍第一軍団の司令部を改編した司令部(UEX:
Unit of Employment-X)のキャンプ座間設置(部隊は米本土に駐留する)、横田基地における空軍司令部、米軍物資輸送の中継点としての築城、新田原基地等〕もその一部である。ミサイル防空用の米軍最新型Xバンドレーダーを車力に配備することは、日本のミサイル防空にも役立つが、中国や北朝鮮の核ミサイルの射程が延びて米本土に到達することを見越してのものだろう。例外として沖縄普天間基地の海兵隊のグアム移転は、軍事的には米国は必要がないが、日本側の希望によるものだ。経費負担の大きさに日本側が拘泥するなら移転しなくてもよいとラムズフェルドが言ったと伝えられるのはそのためだ。また、空母艦載機の岩国移転も日本側の希望による。
イラクとの正規軍の戦争で世界が認識したように、軍隊と軍隊との戦いで米国に対抗出来る国はない。宇宙を含む偵察通信能力、遠距離攻撃能力、精密誘導兵器の能力、三軍による分散集中の立体的な攻撃能力とそのスピード等によるトランスフォーメイションは、技術の発展と独占そして経済力が可能にした。先進諸国は、それぞれ米国の後を追う努力をしているのだろうが、充分に追随できる国はないだろう。
(つづく)
虎ノ門戦略研究所理事長 関 肇
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