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■■■皇位の意味するもの(その2)■■■

平成18年2月11日

  天皇は国民統合の心理的基盤である。例えば敗戦の時、戦争中は一兵士に至るまであれほど戦闘意識の強かった日本人が政府の敗戦の決定に黙々と服して、混乱が生じなかった。それは陛下が敗戦の詔勅を出されたからであり、銃を置くことに反対の人にも詔勅の持つ権威が大きかったからだ。
 明治維新に際し、幕府はフランス、薩長はイギリスの助力により内戦に突入する可能性があった。両者とも兵器の調達では英・仏に協力を求めたが、直接の軍事力による協力は受け入れなかった。それは天皇を中心とした日本という意識が両者に強かったからだ(尊皇攘夷、尊皇佐幕)。もし軍事力による介入があったとしたら、明治日本は別のものとなったかもしれない。少数兵力による欧米のアジア、アフリカの植民地支配の成功は、兵器の性能の差もあったが、現地の権力闘争における介入が契機となったことが多かった。
 江戸時代、幕府は政治権力の実態を握っていたが、将軍位は天皇宣下によるもので、精神的権威は天皇にあった。攘夷派も開国派もそれを前提としていた。どのように激しい政治闘争があっても、政策上の問題であり、国のあり方の根幹にかかるものではなかったのだ。明治維新が革命ではなく、維新というのはそういう意味である。

 今日の政治を見ていると、政党政治の本質が分解の方向にあるのではないか。国会での議論を聞いても、国家国民にとって必要な問題解決の議論は少なく、野党は政府与党の失策を上げつらうことに汲々としているように見える。国会の議論が空しく見える理由だが、国会の議論も政権奪取が前提とすればそれも当然だ。この様な政治の姿に対し、緊急時ばかりでなく日本が国家としての一体感を保ち、安定しているのは天皇という存在があるからだ。日本人はもともと百花斉放で一つの権威に服することを好まない。日本人全体にとっての権威はと、権力から離れた天皇御一人である。

 歴史的に天皇は日本の最も古い宗教、神道の最高祭祀者であり、仏教の保護者であり、和歌等を始め古い文化の中心であり、国民の全てにおける精神的権威の中心だった。長い歴史にわたって続けられてきた天皇の祭祀は国家、国民の繁栄を祈ることだった。今日も数多くの宮中の祭祀が続けられており、天皇は国家国民のために日夜祈られている。政治の具体的細部に携われなくとも、天皇が国家、国民のために祈られる、それが日本の祭政一致の姿だ。これがかつて言われた天皇の神聖である。例えば雛祭り一つをとっても分かるように、日常生活においても皇室は国民の尊敬と憧敬の中心だった。(このようなことにも戦後は反対の教育をしている。)だからこそ政治においても権威の中心となるのだ。

 権力に頼らぬ伝統的権威はどうすれば維持できるのか。伝統には心と形がある。形も時代精神の変化に従って変わらなければならないところもある。しかし、心が変わると伝統そのものが変わり、失われるものもある。長く続いた国民の伝統心理は容易に変わるものではないが、変化の激しい時代にどうやってその維持につとめるかは、為政者の最も重要な任務である。

 125代続いた日本皇室の万世一系は男系を意味する。男系の父が皇室でなければわが国の万世一系ではない。これは人類史の奇跡であり、臨時の女性天皇はあっても女系はなかった。愛子様は男系だ。しかし愛子様の配偶者が皇室の血を引かなければ、その御子は万世一系ではなくなる。万世一系ではない人が皇位に座ることを意味する。最終的には誰が天皇の御位についてもよいこととなる。万世一系が何故大切かということに合理的説明はできないかもしれない。ただ、それには一つの一貫性があり、それをわが国の先祖は大切としてきたということなのだ。伝統的権威とはそのようなものだ。皇位さえあれば誰が位についてもよいということは、天皇に対する国民意識が変わることであり、天皇の権威がなくなることでもある。また天皇位が権力闘争の対象ともなり得るということだ。そのようになった日本は日本としての一体性、統一が保たれるのだろうか。

 有識者会議が簡単に否定した旧皇族の復活や御養子の制度は望ましい選択肢の一つだろう。占領軍は皇室弱体化の一つとして多くの宮家を皇籍離脱させた。報告書は「旧皇族は60年も前に臣籍降下され、一般国民として過ごして来られており、あらためて国民が皇族として受け入れることができるかが懸念される」と簡単に済ませている。歴史上一度臣籍降下された後、皇族に復帰されて、天皇となられた例もある。国民にとって万世一系の説明の方が受け入れ易いのではないか。一旦臣籍降下された方が皇位を務められるのか、という議論もあろう。天皇は天皇という御位が作るのだという意見がある。大嘗祭の重要性を言う人もある。それらの意見について私は門外漢だが、日夜国家、国民のために祈られる天皇祭祀、そして万世一系を継いでいる重さ、それが皇位の重さである。天皇の意思とは現行天皇の個人的意思ではなく万世一系の天皇意思であり、それは日本人の歴史的意識の総意と相応する。
 万世一系をついで天皇の位にあることは大変重いのではないか。我々日本人は我々の先人が大切にしたものを大切にし、万世一系を守ろうではないか。
(以上)

虎ノ門戦略研究所理事長   関 肇

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