

■虎ノ門戦略研究所
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■■■皇位の意味するもの(その1)■■■
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平成18年2月10日
小泉首相は皇位継承ついて、「皇位が将来にわたり安定的に継承されるよう、有識者会議の報告に沿って、皇室典範の改正案を行なう」との立場で今国会に臨んだ。幸い紀子様の御懐妊の慶事があったため、「慎重に判断する」として態度を変えたが、この問題は皇室に関する本質的な問題と思うので私見を述べてみたい。
有識者会議の報告は、長子相続を基本とし女系天皇の道を開こうとするものだ。皇太子、秋篠宮殿下がおられ、早急に解決する必要がないのに何故首相が急ぐのかわからない。ともかくあいくるしい愛子様は国民的人気の中心だし、男女共同参画といった考えから有識者会議の報告に賛同する意見も多いのだろう。愛子様がかわいらしく、男女共同参画も場合によっては大切なことは否定しないが、皇統をどう考えるかは別次元の問題で、合理主義や法理論だけではなく、日本の歴史や国民心理から考えなければならない。それは深い意味での政治を考えるということでもある。
戦後民主主義の特徴は、単純な論理で全てを片付けようする表面的な合理主義だ。人が集団を形成するのは人為の結果であるとしても、集団が集団として存在するには民主主義・合理主義のみでは説明できない精神的中心がある。宗教対立などその典型ではないか。どんな国でもそれぞれが特殊で個別的といえるが、日本にとって精神的中心である天皇とその地位を論ずるには、日本の歴史を踏まえて考えるしかない。皇室なり皇族を敬愛といった現象だけでは精神的中心の存続はわからない。一番問題なのは、皇位について日本人の常識だった歴史知識が現在の殆どの人から失われていることだ。
戦後皇室についての理解は大きく変えられた。皇室の歴史的権威について否定的解釈が流布されてきた。極端に言えば庶民的イメージを強め、単に人気があるだけの存在とする努力がなされてきた。それは占領軍の皇室弱体化政策によるものだが、独立後も継承されている。戦前は全て悪とし、日本の歴史を尊ばないようにするのが占領政策であったが、いまだそれが続いている。神話に始まる皇位が現在も続いているのは世界史上の奇跡だ。これを奇跡と思う心は失われ、神話というと冷笑を浮かべるようになっている。同国人同士に歴史認識の差があれば、他国人との間で理解し合うよりも難しい。極論すれば日本人の分裂を意味しよう。
皇位が安的に継承されるには、皇位という地位が存続するだけではなく、皇位の持つ意味の継承が必要だ。地位の継続だけでは国民に対する精神的権威はなくなる。トインビーやハッチントンを持ち出すまでもないが、日本は世界史の中でも特別の文明を持つ国だ。その日本が国家成立の昔から精神的権威の中心として大切にしてきたのが皇室だ。それが日本人の共有する歴史的認識だった。 この歴史的認識は国家、民族の分裂の危機に際しては統合の力として働く。皇室の持つ伝統的権威は単に皇位があるというだけでなく、そこに誰が位するかということで保たれる。権力によらない伝統的権威の継承とはそのようなものだ。
有識者会議の報告は地位の継承は検討しても、皇位の持つ意味についての考察はない。日本人の国民心理への無知と無関心から成り立っている。日本人の教養がそんなになってしまったかと思うと慄然とする。有識者会議のような発想では法律解釈はできても、彼らには国民心理は政治の本質をなすものとの理解はできない。
(つづく)
虎ノ門戦略研究所理事長 関 肇
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