

■虎ノ門戦略研究所
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■■■中国・ロシア初の合同軍事演習■■■
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平成17年9月13日
8月18日から行なわれた中国とロシアの初めて合同軍事演習は、ロシアが最新の航空機約100機、潜水艦を含む艦艇約70隻を投入し、巡航ミサイル発射訓練も入れた大掛かりなものだった。海上封鎖、上陸作戦等、中国の台湾攻撃を目標としたものだったといわれている。
中国にとっては今後の発展の為に米国との良好な関係は欠かせない。実際に軍事衝突も覚悟して台湾攻撃に踏み切るかは疑問だ。その際にロシアがどのような態度をとるかは別の問題だ。しかし、この演習が米国を意識していることは言うまでもない。
かつて中国共産党は、ソ連の指示と援助で対中華民国軍との戦争に勝利した。その後もスターリンの圧力には必死に耐えながらソ連との協調を続けたが、フルシチョフのスターリン批判から反ソになっていった。そして国境のダマンスキー島での軍事衝突にまで到る。
当時中国にとってソ連は最大の敵だった。私自身の経験をいうと、私がウイーンの日本大使館勤務の昭和57年〜60年頃、中国武官との付合いもしていたが、彼の欲しがった情報は、極東ソ連軍の動向だけだった。
ソ連が崩壊して中ソの敵対的関係はなくなったが、中国共産党の老幹部は、ソ連の崩壊を見て、中国の改革開放路線が共産党の崩壊につながるのではないかとの心配をした。これが胡耀邦そして趙紫陽失脚の一因だろう。その後中ロ関係は悪くはなかったが、合同軍事演習をするまでに関係が進展したのは何故だろうか。
一つは、プーチン、胡錦濤の軍に対する妥協、懐柔である。中国では先般のデモによる混乱の際も、軍による胡錦濤批判があると囁かれた。胡錦濤は軍を充分掌握しているように思えない。一方、KGB出身のプーチンは今まで軍を掌握しているように思えた。しかし、現在、ソ連が崩壊してから連邦内にあった国々のロシアからの離脱は、同国にとって捨ててはおけない問題だ。更にモルドバ、グルジア等ではロシア軍に対する撤退要求がされている。ウクライナもどうなるか分からない。軍にとって特に重大な問題だ。
米軍のタリバン攻撃の際、米国はアフガニスタン周辺諸国に空軍基地の設置を認めさせたが、プーチンがこれを簡単に認めたのは私には意外だった。ロシアにとって大きな軍事的脅威となるにもかかわらず、これを実行したプーチンは軍を抑える力を持っていると思った。
プーチンは、米国に対し妥協的だった。米国との協調はいかなる国にとっても大きな発展の為には必要だからだ。しかしブッシュはプーチンに対して協力的ではないように思われる。最近プーチンと会談した時も、ロシアが民主的でないと言って非難した。プーチンは軍に対しても、米国との協調を主張できなくなったのではないか。
もう一つは、中国・ロシア共通に米国の民主主義の押し付けに対する牽制であろう。民主主義のあり方は国によって違う。一方的な理想主義の押し付けには限度がある。イラクでどれだけ学んだのか、皮肉にもブッシュ自身が最近の演説でこれを言ったが、中国とロシアにとっては米国の民主主義押し付けは脅威にちがいない。
ロシア国民は強力な指導者を求める性向がある。またあの国の混乱は、強力なコントロールが無ければ収まらないだろう。中国もまた、強力なコントロールが無ければたちまち崩壊する危機を秘めている。合同軍事演習は、中国にとってはロシアの後ろ盾が得られるぞ、という米国へ威圧であり、ロシアにとっては、中国と組むこともできるぞ、との意思表示だ。
強大な大陸間弾道弾を配備しているロシアは米国にとって最大の軍事的脅威だ。一方、中国の侵略主義的発展は米国にとっても大きな問題の筈だ。表面的には平静を装っているが、米国にとって両国が結びつくのは好ましくない。
日本にとって中国の膨張を抑止するためにはロシアと協調ができれば好都合なのだが、北方領土問題があり、ことは簡単ではない。軍事力について確固たる態度の取れない日本は、日本だけでロシアと国際的な安全保障環境の策定について交渉出来る立場にはない。
アジアでは中国の軍事的動向が日本の安全保障にとって最大の問題だ。それにどう対応するかは残念ながら米国の動きに依存している。ロシアと米国がどのような関係を持つかは極東の日本にとっては重要なのだ。
ブッシュの態度は、ロシアと中国を結びつけるという意味で米国にとっても問題だが、日本にとっては更に大きな問題だ。イラク戦争について米国に対する忠告云々を口にするような人々は、これをこそ問題とすべきではないか。
(完)
虎ノ門戦略研究所理事長 関 肇
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