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■■自からを省みないわが国のエスタブリッシュメント■
H17.03.10
  ライブドアのニッポン放送株の取得は、まさに奇襲だった。源平の戦いで勢力挽回を図る平家は、一の谷に大軍の陣を張ったが、義経から背後の急峻鵯越を衝いた思いもよらぬ奇襲を受けて敗退した。ニッポン放送の場合は鵯越とは違い、攻撃される可能性の認識はありながら抛っておいた。油断の上で奇襲を受けたということのようだ。
 ニッポン放送はあらゆる手段を使って対抗しようとしているようで、奇襲だけで勝負がついたわけではない。ニッポン放送はフジテレビに新株予約権を与えるべく画策しているが、ライブドアからはこれを商法違反として仮処分申請がなされている。暫くは応酬が続くものと思われる。
 
 かつて、孫正義氏がYahoo BBを立ち上げた時、既存業界エスタブリッシュメントからの反対はすさまじいものがあった。しかし今日振りかえって見ればわが国のインターネットの発達に寄与した彼の功績は大きい。そして、「これからはインターネットが社会の仕組みを規定していく」という堀江氏の発言には説得力がある。 ただ私は放送エスタブリッシュメントに対する非エスタブリッシュメントからの殴り込みが持つ意味とか、インターネットと既存放送システムとの関係等について論じようとするのではない。

 論じたいのはエスタブリッシュメントの資質についてである。エスタブリッシュメントは堀江氏を非難する前に自らを省みているのだろうか。エスタブリッシュメントはある意味ではもっと悪質なのに、これを蓋したまま非難の発言をしているのではなかろうか。これでは正に堀江氏の言う「エスタブリッシュメントには社会を変革する力はないのではないか」、に同感する。エスタブリッシュメントは、堀江は金儲けしか考えていない、と非難する。だが、エスタブリッシュメントにそんなことを言う資格があるのか。

 先日テレビの記者会見で奥田経団連会長は述べた。「堀江さんは本を沢山書いたが、そこでは金儲けの礼賛しかしていない。そんな人でよいのか・・・」と。
 確かに,数百億の金を操り、社会に大きな影響を与え得る人の関心が金儲けにしかないとしたら大変なことだ。しかし財界エスタブリッシュメントたちに、そんなことが言えるのか。別の団体だが、経済同友会の北城恪太郎代表幹事、小林陽太郎前代表幹事が中国から帰国したときの発言で、「日中間の対立解消のため靖国問題について中国の主張を取り入れるべきだ」と主張した。

 恐るべき発言である。靖国問題とは日本人の精神の問題に対する中国の干渉、介入そのものである。北城、小林両氏は中国との経済的関係改善のために、日本人の心の問題に中国の干渉を認めろというのだ。それは、単に金儲けを礼賛するより更に悪質である。金儲けのため良心を引き渡せと言っているのだ。
 彼らは日中の政治的関係の改善を図ると言うが、そのために日本人の心の問題に外国の干渉を受け入れようとするのなら、彼らが日本人の心を持っているのか、と問いたい。人の心の問題とは、日本人のアイデンティティーの問題であり、日本人が日本人であることの問題である。かように大切な問題に外国の干渉を認めよという精神は、植民地人のものだ。仮に両氏が靖国神社の存在に反対であっても、それは国内の問題として、国内だけで取り上げるべき問題だろう。金儲けの謳歌を憂うるよりももっと大きく憂うるべきではないか。

 こんな恐るべき発言が財界のリーダーから臆面もなくなされ、財界で問題ともされない。それでいて殴りこみをかけてきたアウトサイダーに対しては金儲け主義と非難する。金さえあれば、という気風がますます日本に蔓延しつつあるのを私は危惧しているが、全てにおいてパラダイムシフトを考るべき今日、自らを省みないエスタブリッシュメントに対する堀江氏の挑戦には、むしろ力と希望を感じる。
たとえ、人相・風体が気に入らず、彼には中味が無いと言われようと!

虎ノ門戦略研究所理事長   関 肇

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