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■■■■旧日本軍「毒ガス兵器遺棄」判決を質す■■■
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平成15年10月3日
「旧日本軍が敗戦時に中国に遺棄した毒ガスなどで被害を受けた」として、中国人被害者と遺族が日本政府に損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は9月29日、原告側の請求を全面的に認め、国に慰謝料を支払いを命じる判決を言い渡した。
判決の理由は新聞を読んでいただくとして、ここでのポイントは、旧日本軍は毒ガスをはじめ兵器を中国(当時は支那。この歴史的名称がパソコン辞書にないことも面妖なことだ)大陸に遺棄してはいないことだ。遺棄したのは、旧日本軍が毒ガスなどを含め兵器を引き渡した相手の軍隊だ。したがって我が国は遺棄に対して基本的に責任がない。
以下述べることは、戦史を読めば簡単に分かることだが、旧日本軍はどこかの軍と違い兵器を安易に遺棄したりはしない。負けて敗走し、軍としての統制がとれなくなった場合に、遺棄した例はある。しかし、旧日本軍は中国大陸では負けていない。小戦闘で負けた例はあるが、大きな戦いでは一度も敗れていない。中国大陸では、旧日本軍は健在だったが、ポツダム宣言の受諾による東京からの命令で、敗戦を受け入れたのだ。「天皇陛下をお迎えし、大陸で戦争を続けよう」と言った将軍さえいたという。
旧日本軍は東京からの命令に従い、満州ではソ連軍(一部は国民党軍、場合によっては共産党軍)、中国では国民党軍(場合によっては共産党軍)に兵器を引き渡した。したがって、問題とされている兵器の遺棄の大半は、日本軍から兵器を引き渡された軍隊が行ったものなのである。日本との戦争が終わった後も、中国では内戦が続き、国民党軍は共産党軍に敗れて、最後は台湾に逃げ込んだ。その過程で、処分に困った兵器などが遺棄されていったことは想像に難くない。
こうした事実を踏まえれば、「旧日本軍の遺棄化学兵器」というのは、新聞の見出しからして間違っている。ただ問題は、旧日本軍が国民党軍に引き渡した毒ガスなどの兵器を、日本政府が旧日本軍の遺棄化学兵器として認め、すでに2兆円とも言われる処理費用の支払いを決定し、自衛隊などが協力することを約束、実行していることだ。
なぜこのようなことになってしまったのか。第1の原因は、外務省をはじめ、交渉に当たる日本政府の担当者の歴史と軍事に対する無知だ。第2の原因は、交渉の基本となる「建前」を安易に無視して、容易に妥協しようとする精神だ。これは無国籍症候群とでも言うべき症状である。事実を反映しない「従軍慰安婦問題」が独り歩きした原因も同根だろう。
遺棄化学兵器の処理に日本が金を出す背景として、以前、こん なことを耳にしたことがある。
中国は化学兵器禁止条約を受諾しようとしないが、米国はどうしても中国に受諾させたい。そこで、日本が中国に金を渡すことによって受諾させる。そうすれば、米国は化学兵器の査察ができるようになる、というものだった。
これがどこまで正鵠を射ているかはわからない。ただ、たとえ、中国に化学兵器禁止条約を受け入れさせることが日本の利益になるとしても、そのために、こうした米国の「要請」を素直に受け入れる日本政府や、「旧日本軍の遺棄化学兵器」という間違った歴史に疑問を持たない日本人は、やはり無国籍症候群にとらわれているというべきだろう。
私が払っている税金をこのようなことに使ってほしくはない。国際社会では、金を出すなら出すで、なぜ出すのかという理屈を明確にして「筋」を通す必要がある。国際社会では、最初に打ち出した基本の論理がいつまでも影響力を持ち続けるのである。我が国はこういう国際社会の常識にあまりに無知だ。同じような過ちを、何回繰り返せば気が済むのだろうか。
日本政府の決定があるにせよ、裁判所は行政から独立している。ぜひ歴史を調べ直して、真っ当な判決をしてもらいたい。防衛庁の戦史部には、敗戦時の兵器引き渡しについても詳細な史料があるはずだ。いまこそ戦史部が機能すべきときである。
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