

■虎ノ門戦略研究所
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■■■■「専守防衛」(1)■■■
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平成15年7月9日
「専守防衛」という戦略態勢に関する用語は、戦後日本でつくられた新語のようだ。類似の言葉で「専守防禦」というのがあったが、これは要塞の防禦などに使われる戦術用語で、戦略用語ではない。
戦略用語としては、「戦略守勢」とか「戦略攻勢」という言葉がある。防衛庁は、「戦略守勢」と「専守防衛」を同じように説明しているが、私は異なるものだと思う。
「専守防衛」は、攻撃を受けたときに初めて防衛力を行使し、侵攻してくる敵をそのつど撃退するという、受動的な防衛姿勢である。守り専門で、必要があっても相手の基地を攻撃することはせず、攻撃的兵器も持たないことになっている。
しかし、「戦略守勢」は、受動的防衛姿勢ではあるが、敵との相対的関係では戦略的、戦術的あるいは先制的攻撃をすることもある。「敵の基地をたたかない」などということは全くない。「戦略守勢」は政策的なものだが、「専守防衛」は法的束縛のように思える。
では、「専守防衛」という言葉を、いつ、だれが使いだしたのか。
はっきりしないが、昭和30(1955)年の国会答弁で、すでに防衛庁長官が使っている。その後の国会答弁ではしばしば使われ、軍事的にどのような意味を持つかという点はあまり考慮されず、自衛隊を憲法違反とする野党への答弁のなかで、しだいに意味が固まっていったようだ。
戦争は政治の一手段といわれるように、本来、軍事は政治に従属すべきものである。しかし、軍事には軍事の合理性があり、また戦争は暴力の無限界的行使ともいわれ、勝つか負けるかが決定的結果をもたらす。
従って、政治主導と言っても、政治が軍事をよく理解することが、その前提だ。軍事を理解しない政治の優先は、軍事ばかりでなく政治にも大きな被害をもたらす。「専守防衛」が軍事的意義を考慮するよりも、反対野党に対する答弁上の配慮の中で生まれたとすれば、不幸なことだ。
興味をお持ちの方のために、政府の考えを少々紹介しよう。
国会答弁以外で防衛庁が「専守防衛」という言葉を公式に使ったのは、昭和45(1970)年に出た最初の防衛白書(いわゆる「中曽根白書」)で、「わが国の防衛は、専守防衛を本旨とする」と書かれている。同時に白書は、「戦略守勢を取る」とも言っている。
昭和47(1972)年、田中角栄首相は、それまでの国会答弁を集約した形で、「専守防衛ないし専守防禦というのは、防衛上の必要からも相手の基地を攻撃することなく、もっぱらわが国土およびその周辺において防衛を行うということでございまして……、<中略>、なお戦略守勢も、軍事的な用語としては、この専守防衛と同様の意味のものであります」と答弁した。
その後、昭和60(1985)年の答弁書で、政府は、「専守防衛という用語は、相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使し、その態様も自衛のため必要最小限にとどめ、また保持する防衛力も必要最小限のものに限られるなど、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢をいう」とし、また「戦略守勢という用語は、我が国の防衛力の運用面において、専守防衛と同じ意味で使用していた」と述べている。
次回は、専守防衛の問題点や戦略守勢などについて述べよう。
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