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■米朝間のせめぎあい

平成15年1月24日

 年北朝鮮が核不拡散条約(NPT)の脱退宣言をしてから2週間。米国と北朝鮮との関係は、非難(やじ)の応酬の段階から、「具体的な提案」というボールを投げ合う「せめぎあいゲーム」の段階に進んでいる。
 アーミテージ米国務副長官は1月17日、日本人記者団との会見の席で、「米国の目標は金政権打倒ではない」と述べた。北朝鮮が核開発計画を放棄すれば、北朝鮮への不可侵を文書化し、新たな包括協定を結ぶとし、軽水炉の建設と重油の供給を進めてきた朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)も当面存続させるとの意向を明らかにした。野球の試合に例えていえば、守備についた米国が、「外交的解決ボール」をど真ん中に投げ込んだ形だ。
 観客席からは、米国側が大幅な譲歩をしたかに見えるかもしれない。しかし、北朝鮮というバッターの資質とスタンスを踏まえると、このボールはけっして「打ちごろの球」ではない。
 米国は、体制保障と経済支援の前提として、北朝鮮の通常兵器の縮小や韓国との軍事的緊張緩和も協議事項に含めようとしている。こうした米国の要求をすべて飲めば、金正日の独裁力が弱まり、政
権崩壊につながるのは明白だ。少なくとも、金正日や北朝鮮政府はそう考えるだろう。

●10年前より低下した北の「実力」
 北朝鮮が「瀬戸際外交」をとり続けても、米国がいますぐ困ることはない。核開発計画が現実化しても、脅威となるまでには半年以上かかる。米国はその間、イラク問題に対処しつつ、在韓米軍の装
備強化などを行っていればよい。
 他方、北朝鮮は94年の米朝枠組み合意の成立時とくらべても、状況は明らかに悪化している。食料事情は劣悪を極め、電力不足も深刻だ。
 金正日が頼みとする軍にも問題は多い。かりに兵士の士気の高さは維持できたとしても、兵器は旧式化しているし、稼動状況にも疑問がある。
 高度な兵器は、使用しなくても、時間の経過とともに部品が劣化する。ソ連崩壊以前は交換部品などの支援も受けられたが、現在は乏しい。となると、たとえば戦闘機や戦車の稼動状況は低下するし、
石油不足の余波で空軍パイロットの練度も維持できない。10年前とくらべても、北朝鮮の戦力や継戦能力は大幅に低下している可能性が高い。
 では、北朝鮮の軍事的強みは何かといえば、ミサイルと砲しかない。98年のテポドンの発射実験が示すように、北朝鮮がそれなりのミサイル開発能力を保有しているのは事実だ。我が国に対して100基を超えるノドンが向けられているとの情報もある。ソウルに向けられたミサイルや1万門ともいわれる砲も脅威だ。
 しかし、標的とされている日韓両国と違い、米国からみれば北の軍事的脅威とは「それだけ」。つまり、総合的に戦争をする能力には欠けているのである。

●ブッシュ政権は北を「敬遠」しない
 北朝鮮は強がりを言っている。これはイラクも同じだが、独裁者の強がりには必ずしも根拠があるわけではない。国内の反響を考えると、力で国民を抑えている独裁者は、対外的に強がりを言わざる
を得ないのだ。
 現在の北朝鮮は、金体制の維持だけが目標である。そのためには、第一に米国から攻撃されないこと、第二に経済支援が必要である。しかし、それを手にするのと引き替えに、米国の要求を飲めば、結
局のところ、金体制の崩壊につながることは前述した通りだ。
 今後しばらくは、日韓両国が望む平和的解決を表面的には追求する形で、米朝がそれぞれの主張を掲げてせめぎあうだろう。経済封鎖も含めたさまざまな「変化球」も投げられる米ブッシュ政権に対
し、北朝鮮ができるのは、「打つぞ打つぞ(撃つぞ撃つぞ)」と相手を威嚇し、「敬遠」してくれるのを待つことぐらいではないか。
 米国は、イラク問題や韓国の新政権の意向などを見据えて、当面は明白な答えは出さないだろう。「平和的解決」の内容が米朝でどのように違うか。それが今後のゲームを見るうえでのポイントである。

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