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■安全保障の見取り図
平成15年1月元日

 年頭にあたり、今年の日本と世界の安全保障問題について、私なりの見取り図をご紹介したい。
 ポイントはもちろんイラクと北朝鮮だ。
 1月〜3月に、イラクは米国の支配下に入る。米国の了解のもとで、フセインがリビア等に亡命しなければ、戦争は避けられない。満足すべき兵力の展開が完了したら、米国は、そのままじっと待つわけにはいかない。軍の弛緩は避けなければならないからだ。
 イラクがどのぐらい抵抗できるかは専門家の間でも見方が分かれているが、そう長持ちはしないと私は見ている。米国とイラクでは戦力の差が圧倒的に違うし、イラク軍のフセインに対する忠誠心にも疑問があるからだ。
 いずれにせよ、この戦争の結果、世界中の国家は、もはやだれも米国に抵抗できないことを改めて知ることになる。
  イラクの管理体制が、戦後日本のGHQのような国際的体裁をとれば、日本人は満足するだろうが、それは本質ではない。注目すべき点は、イラクの石油利権をめぐって、米国以外の英、仏、ロシア等がどのような動きをするかだろう。
 イスラム教の信徒は、みな同胞という教えが特に強く、またイスラムは一つで、国家があることはむしろおかしいという考えがある。
 しかもアラブ諸国の現在の国境は、英国等により極めて人為的に作られたものだ。現国家の支配者は米国との協調で支配を続けようとするだろうが、民衆レベルとの乖離は進む可能性が高い。アルカイーダなどのテロ組織がどうなっていくのか。文明の衝突などという単純な図式では整理できない問題だ。
 北朝鮮というと、日本ではまず拉致問題だが、国際的視座からいえば、問題は「核」と「ミサイル」だ。
 とはいえ、北朝鮮が核施設を稼動しても、実際に核弾頭が生産できるまでには1年はかかる。イスラエルはイラクの核施設を爆撃して破壊し、イラクの核開発は当面、とん挫した。イラク問題を処理した米国が、北朝鮮の核施設の攻撃に踏み切れば、問題は簡単に終わる。核施設の再建設は、簡単にできるものではないからだ。
  北朝鮮が核施設を稼動したのは、米国を交渉の場に引き出すためのカードだったが、ブッシュ政権には効かない。武力を行使する前に、まず北朝鮮の輸出入を断つなど、あらゆる強行手段をとる可能性が高い。
 ただ、北朝鮮のカードがゼロになったわけではない。北朝鮮がイラクよりやっかいなのは、ソウルが38度線から50キロの場所にあることだ。 北朝鮮が暴発して韓国を攻撃すれば大変な被害がでる恐れがある。その被害の大きさが、今後の米韓関係にどのような影響を与えるかを、米国も意識せざるを得ない。これが北にとってのカードであり、対米抑止力だ。
 米国は特定の国に対しては、核攻撃も辞さないと言っている。核兵器保有によって、将来、米国等の安全に脅威となるような国には先制攻撃をすることも許される、というのが、イラク攻撃の理由の一つだ。
 米国が北朝鮮を攻撃する際に、核兵器まで含んだ先制攻撃をすれば、韓国の被害は少なくなる。たしてそれに踏み切るのかどうか、日本にとっても他人事ではない。
 金正日は、国内体制の失敗を打開しようとして、対日関係、対米関係の改善という賭けに出た。しかし、この試みは現時点では完全に失敗している。さらに韓国攻撃という「暴発」をすれば、北朝鮮は崩壊し、金も殺される。金にとっては、現体制の存続が最大の目的だ。それでも、やけに なっ て暴発するのか。
 金正日体制が崩壊したら、北朝鮮は韓国に吸収される。この吸収のコストは莫大だ。そのとき日本に求められるカネは、イラク再建に必要な金額とは桁違いだろう。カネを出せという米国や中国の合唱に対して、わが国はどう対応するのか。しかも、統一後の韓国は、このままでは、親中国、反日路線を歩む可能性が高い。北朝鮮なき後の東アジアのパワーバランスについて、いまから考えておく必要がある。


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